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英国の奴隷労働禁止法(Modern Slavery Act 2015)の報告内容は抜け漏れだらけ(法律概要説明付き)-Supply Management (2016-03-17) | ||
※法律の内容説明が行われていない様子がありますので、概要説明を添付しました。 3月末決算企業から対応が必要になる英国の奴隷労働禁止法(Modern Slavery Act 2015)について、先行的に報告を公表した企業の内容があまりにも不十分である旨、CIPS-Supply Managementで報告されています。 記事によれば、75件の先行提出分をチェックした結果は以下のようとのことです ・内容も公表要件の2つも完璧な出来のもの:9件のみ ・公表要件である役員の署名と、ホームページトップからのリンクの双方があるもの:22件 ・役員の署名があるもの:33件 ・ホームページトップからのリンクがあるもの:33件 どのような制度かは、政府作成のガイドブック「Transparency in Supply Chains etc. A practical guide」に平明に説明されていますが、それでもこのような間違い状況です。 すでに、WSJが1月20日の記事"Many UK Businesses Unready for Anti-Slavery Law, Survey Finds"で全然用意していないと報道していました。 内容的にも、昨年11月19日のFTで"‘Weak’ Modern Slavery Act must be enforced to prompt change in working practices"と"Weak"をつけて語られるような緩さのあるものです。 英国企業は本気でやるつもり無いだろうと疑ってしまうような状況です。 各種資料のURLは以下: 英政府ガイドブック:Transparency in Supply Chains etc. A practical guide https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/471996/Transparency_in_Supply_Chains_etc__A_practical_guide__final_.pdf WSJ記事"Many UK Businesses Unready for Anti-Slavery Law, Survey Finds" http://www.wsj.com/articles/many-uk-businesses-unready-for-anti-slavery-law-survey-finds-1453334460?mod=djemlogistics FT記事"Weak’ Modern Slavery Act must be enforced to prompt change in working practices" http://blogs.ft.com/beyond-brics/2015/11/19/weak-modern-slavery-act-must-be-enforced-to-prompt-change-in-working-practices/ わかりやすいと言われているCIPSのガイド: http://www.cips.org/Documents/Knowledge/Procurement-Topics-and-Skills/4-Sustainability-CSR-Ethics/Sustainable-and-Ethical-Procurement/Modern-Day-Slavery.pdf なお、2020年の東京オリンピックを契機に、この手の要求が日本でも生じてくることが予期されます。そこで、奴隷労働禁止法で企業に求められる内容とはどのようなものかを、以下に一度整理してみました。 ============= ■英国の「Modern Slavery Act 2015」の概要 英国の「Modern Slavery Act 2015」とは、奴隷的な扱いの禁止を定めた法律で2015年3月26日に制定されました。その一部の第6章(第54条)に「サプライチェーンの透明性など(Transparency in supply chains etc)」という条項があり、そこでサプライチェーンで奴隷制労働が行われていないことの報告義務を課したことから、企業に大きな影響が及びました。ちなみに「現代の(Modern) 」が付くのは、現在有効な奴隷労働の定義が1930年代に作られたもので、その内容が植民地制度を前提としているためです。 その概要は以下のようになっています。 対象企業:英国国内で事業を営むあらゆる業種の企業で事業収入が3600万ポンド(約60億円弱)の企業が対象になります。約12,000社からの報告が想定されています。 実施内容:奴隷労働や強制連行を行っていないことの記述(The slavery and human trafficking statement)を公表する必要があります。 記述は、以下の内容を含まなければなりません。 a.自社およびサプライチェーンの構造図 b.奴隷労働や強制連行に対する企業ポリシー c.自社事業およびサプライチェーン上で奴隷労働・強制連行がないことを確認した手順 d.自社事業やサプライチェーン上で奴隷労働や強制連行のリスクが想定される個所、およびそれを評価・管理する手順 e.奴隷労働や強制連行が自社事業やサプライチェーン上にない確認の効果測定指標 f.奴隷労働や強制連行に関するスタッフ教育・能力開発 記述・公表に関する要件: ・記述はわかりやすい平明な英語(The plain English Campaign準拠)で記述すること ・役員クラス以上の職位者の内容承認の署名がなされていること ・企業ホームページのトップに、その記述へのリンクをわかりやすく設定すること 罰則:法律で指定された要件を満たさない場合は罰金(unlimited fine)が課されます。 時期:2016年3月31日決算の企業から、決算時に開示する必要があります。
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