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デジタルツールを武器に、購買部門が表舞台に躍り出る時だ-Financial Times (2018-11-25)

11月21日にFinancial Timesが ”Procurement comes out of the shadows”というタイトルで、購買部門がデジタルツールを活用しつつ、多面的に企業活動に影響を及ぼせる状態にあることを報じる記事を出しました。

これまでの購買部門の在り方については、”graveyards for underperforming employees(出来の悪い従業員の墓場)”とか、電話で ‘Make it cheaper’(もっと安くしろ)”と言うだけとか、かなり過激な表現がなされています。また改善事例として独鉄鋼・工業製品メーカーのテッセンクルップが挙げられています。
(CIPSなどで購買業務に関心が高い英国でも、最有力経済紙のFinancial Timesがこういう論調の記事を書くところは、興味深くもあります。)

テッセンクルップの事例は、以下のような内容で紹介されています。

・2012年にChristian HolzerがテッセンクルップのCPOに就任した時、同社は倒産の可能性があるくらい業績が悪化していた。そのような状況で、Christian Holzerはコスト削減、事業価値創出への貢献、労働組合との協調という相反する課題に取り組まねばならなかった。

・ただしここ10年間のデジタルツールの発展は、購買部門を単なるコストカッターかつ倫理的調達の実践者から、業務簡素化の推進役や新たな収入源になることを可能にした。

・Holzerは、抵抗を抑え、有能なメンバーで部門を再構成し、デジタル化を進めるのに5年間を費やした。その結果、設計段階からサプライヤーの力を使えるようになり、購買部門の心持ちも変わった。
クルップテッセンは収入の65%の購買支出があり、その額は250億ユーロに及ぶ。購買改革の効果は大きい。

・さらに2012年からの改革の結果、業務効率化や炭素排出量管理も含め、目標を越えた50億ユーロの成果を上げた。CEOのGuido Kerkhoffは2012年以降の改革成果の半分は購買業務が生み出した、2012年に就任したころには、どのサプライヤーからいくら買っているかもわからなかったのに、と語っている。

またこのような状況に対し、コンサルタント各社やITベンダーは次のように語っています。

・ITベンダーのIvalua社のマーケティング責任者Alex Saricは、デジタル化は購買部門の役割を単なるコスト削減から、事業価値の創造に変化させるとしている。購買部門を社内で戦略的に考えるようになっている。

・コンサルティング会社BainのパートナーKlaus Neuhausは、有能な購買部門は8~12%の購買コストを改善する可能性があり、コスト最適化の重要要素だとする。

・”Make Procurement Awesome”をスローガンにしているSAP AribaのAribaネットワークで取引される額は、2.1兆ユーロに達するなど電子購買は急速に拡大しており、かつBASFの事例のように、AribaとIBM Watson AIを結びつけてサプライヤーの評価格付けを行うなどに発展している。

また、購買業務のデジタル化は、サプライヤーの人権侵害問題などの解決にも貢献している。