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高力ボルト不足は仮需過熱、国交省が実需を明確にした発注を業界団体に要請-日刊工業新聞ほか (2019-05-23)

高力ボルト不足は仮需が過熱している混乱であり、実需情報を明確にした注文を行うようにと、国土交通省が業界団体に要請したことが、日刊工業新聞をはじめ各社から報道されています。

高力ボルトは、昨年夏ごろから供給不足が顕在化し、その原因は、工事需要の拡大、生産メーカー数の減少による生産能力不足、材料の特殊鋼線材が自動車業界と取り合いで材料不足などと推測されていました。

この事態を受けて、国土交通省はアンケート調査(10月~11月調査実施)を実施し、11月22日に「回答状況から3か月後も同等の結果が予想される」との結果を発表をしました。なおこの時点では、納期6か月、影響を受けている工事は8割強となっていました。そして対応措置第一弾として「余裕を持った工期設定や必要なボルトの早期発注」を調達企業に促しました。

しかし12月26日になると、国土交通省は措置第二弾として「取り置きなどで実需以上の注文が一時的に発生している可能性があるので、必要となる時期と数量を明確にした計画的発注等の取組を促進」を業界に要請しています。

但し3月に調査してみると、納期はさらに延びて8か月、影響を受けた工事は9割に拡大したとのこと。
それに対して5月17日に、国土交通省は「実需の伸びは2~3%に過ぎない」「ボルトメーカーの供給能力が、実需に対して著しく下回っている状況ではない(市場の混乱に基づく一時的な現象である)」「先行発注、水増し発注、重複発注などの仮需によるところが大きい」との現状に対する見解を示したうえで、建設業界団体9つに、物件(工事)情報 -対象物件(工事)、工事納期、納入場所など- を明確にした発注を行うことを、注文書雛形を示して要請したとのことです。

買占め・売惜しみ防止法のような法規制までには至らずとも、パニック的な需給逼迫には行政による事態明確化と調整が必要であり、今回の第三弾措置で高力ボルト不足は解消に向かっていくのではと思われます。

一方で、完全に憶測ではありますが、工事作業員などの逼迫が生じている経済情勢の最中に、官庁が「高力ボルトの逼迫見込みは3か月先も変わらない、必要なボルトの早期発注を」と、実際の需給状況を明確することなく発表したことが、火に油を注ぎ、以降のさらなる逼迫を招いたのではとも思います。

参考)
高力ボルト重複発注など市場混乱抑制のため発注様式を統一 納期・納入先が明確な注文を徹底
~更なる納期長期化傾向受け、国交省が鉄骨業界等へ要請~-国土交通省(2019年5月17日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo14_hh_000837.html

調達不安が広げるボルト不足 国交省、余剰発注にクギ-日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45209360U9A520C1920M00/

あって当たり前がない 活況の建設に「ボルト」ネック|オリパラ - 日本経済新聞 (2018年11月15日)
https://www.facebook.com/itscobuy/posts/2158298314201401

建設現場の高力ボルト需給安定化を業界に要請~需給ひっ迫緊急調査に続く措置第二弾!~-国土交通省(2018年12月26日)
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo14_hh_000815.html

建設現場の高力ボルト需給ひっ迫を受け緊急調査を実施 8割強で工期に影響 ~「高力ボルトの需給動向等に関するアンケート調査」の結果を公表~-国土交通省(2018年11月22日)
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo14_hh_000804.html