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調達先の更なる多国籍化と自動化による担当業務消滅の現実(双方とも予測提示)に、購買部門はどう対処すべきか-マッキンゼー (2019-05-28)

戦略コンサルティング会社のマッキンゼーが、最近購買領域に関する論考を立て続けに公開しています。5月後半(5月23日頃)にも「購買業務のギアを切り替えろ(Shifting the dial in procurement)」というタイトルで、調達先の更なる多国籍化と自動化による担当業務消滅という2つの現実に対して、コスト削減のパーセンテージを追いかけるような現状の購買業務はシフトチェンジすべきという、オーストラリアの2人による論考を発表しました。そしてその内容として、自動化された場合に、どの業務がどの程度残るかの推定は、特に興味深く思えました。

まず最初の現実予測は、マッキンゼー社のグローバル取引の遷移モデルからの推定です。
1980年代以降、地域を越えたグローバル取引がすでに8倍に拡大したとのことですが、2025年にはフォーチュン・グローバルトップ企業500社のうち229社が中国を含めた新興国になる(2010年は中国主体の85社)と予測されています。ということは、新興国のサプライヤーが取引相手として増加し、供給不安定、調達リスク、さらにはCSRの課題も急拡大することが想定されるが、購買部門は果たしてその備え・覚悟ができているのかとの問いかけがなされます。

次に示されるのは、現在利用可能な情報技術を使ってもどのくらいの購買業務がその種別毎に自動化されるかです。その結論は、現時点に利用可能な情報技術を適用するだけでも全体で4割は自動化される(人手業務で無くなる)とのこと。さらに将来的には、業務種別ごとのムラはあるものの(購買品目戦略は4割残りますが、支払処理の人手業務は消滅)、8割近くが自動化(人手消滅)されるとしています。こちらの対処も考える必要があります。

そしてこの論考では、このような状況に対して以下の提言がなされます。

1.購買部門は何をなすべきかをもう一度考えてみよ(Rethink the procurement mandate)
・コスト削減から、社内他部門と協働した持続的な価値創出部門への変貌はどうか
・デジタル化ベンダーとのエコシステムを築き、サブスクリプション契約などにも対応し、社内へのイノベーション導入の担い手「チーフ・エコシステム・オフィサー」になるのはどうか

2.デジタルツールや分析機能(将来的にも人手に残るとされている業務種別です)に投資せよ(Invest in digital and analytics)
・自部門の効率的な業務の流れを形成するとともに、社内他部門との連携を活性化する
・IoTなど新規データも活用し、データに基づいた根拠ある判断に基づいた業務を行う

3.将来に適応できる購買部門の組織を作り上げよ(Future-ready the organization)
・新たに必要な人材や能力育成に投資するとともに、キャリアパスも見直す
・変化に迅速に対応できる俊敏な購買組織になる

提言の内容は「チーフ・エコシステム・オフィサー」のような目新しい概念があるものの、やや見慣れたものに思えるところもあります。しかしそれよりもこの論考では、データに基づいて示される予測の方が刺激的に思えます。マッキンゼーの予測集計モデルは、裏付けがあって提示されるのが通例ゆえになおさらです。