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サプライチェーンの透明性とは、本当はどういうことなのか?-ハーバード・ビジネス・レビュー (2019-08-28)

8月20日にハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)が「What Supply Chain Transparency Really Means」の題で、CSR観点でのサプライチェーン透明性確保の論考を発表しました。著者はMITの持続可能なサプライチェーンセンターのAlexis Bateman氏など。2017年6月には、サプライチェーンの透明性(Supply Chain Transparency)に関する論文「From Haute Couture to Fast-Fashion: Evaluating Social Transparency in Global Apparel Supply Chains」を発表した組織です。

この論考では、サプライチェーンの透明性の考え方を再度説明するとともに、その後の進展も記すことを狙いとしています。注目されることが多いHBRに今回掲載されたことで、その内容には少し留意をしておくべきと思います。

論文の主要な内容は以下のようになっています。

・サプライチェーンの透明性(Supply Chain Transparency)は15年前には知られていなかったが、世論の影響もあり、今やマネジャーたちにとって留意必須の概念になっている。

・消費者はサプライチェーンの透明性を重視する(労働環境などに配慮する)企業の製品を、2%~10%の高値でも買うようになっている。したがって、企業はその判断に資する情報提供を行うことが重要になる。

・一方で、メディアやNGOが不正事例をスキャンダルとして暴きだすことで、企業の評判が棄損され、その業績にも影響する。 ・さらにこのような動向から、紛争鉱物(ドット・フランク法)、強制労働(英国やオーストラリアの現代奴隷法など)、食品安全(米国米国食品安全強化法)などの法規制も整備されてきている。

・しかし、サプライチェーンは複数企業にわたる特性を持つなどが理由になって、透明化はなかなか進まない。透明性情報の流通もうまくいかず、透明性の仕組み構築の投資対効果が不明確なのも一因である。

・筆者らは、企業のサプライチェーンの透明化状況の程度を測る手法を考案した。縦軸にサプライチェーンの深さ(自社内~原材料サプライヤー)、横軸に透明化施策(規範(Code of Conduct)策定→実施標準定義とその仕組みの存在認定→実績測定→個々の品物のトレーサビリティ確保→実施状況の全面開示)のマトリックス上で、自社がどこにあるのか、さらには他社がどこにあるかを位置づける手法である。これにより、自社の位置づけが把握できる。

・そのうえで、以下の手順を勧める
(1).規制、過去の問題事例などから、自社にどのようなリスクがあり、どのような状態を目標とする(なりたいか)かを定める
(2).リスクを優先順位付けする。加えて、サプライチェーンの経路図を目に見えるように描きだしてみる
(3).対応施策の情報を集める(どのような対応施策が採れるかを検討する)
(4).施策の実施目標を明確にし、必要な施策を実施する
(5).実施状況を公開する
※サプライチェーンCSR施策は単に実施するだけではなく、社外にその実施状況を伝えることが重要と、論考では主張しています。

・このようにすることで、法規制の遵守が進むことに加えて、企業の評判棄損リスク削減と世論の信頼感確保、そして従業員が誇りを持って働ける企業風土づくりの効果達成が見見込まれる。施策実施から得た情報は企業のさらなる改善にも結びつく。
・なお、サプライチェーンの透明化は、すべての従業員が担う継続的な改善活動によって成立するものである(全員の課題である)。