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トヨタのミルクラン調達物流改革~値段が高い、荷量安定などの課題に立ち向かうが、まだ道半ば- 日経クロストレンド (2019-08-30)

物流費の高騰が値上げ要因として報道されることが多い昨今ですが、調達物流改革に取り組むトヨタの事例が8月に3回、日経クロストレンドで取り上げられました(日経ID保有者は月3本まで記事閲覧できるので、全部の記事が読めます)。

ミルクランは、2000年代初めごろから日系メーカーに、特に海外導入で、苦労している、理論のようには進まないとの声がありましたが、物流ひっ迫状況下の国内では、トヨタですら大きな苦労がある状況が生々しく伝わる記事に思います。

記事の概要は、以下。
・トヨタは調達物流について、従来の「軒先渡し(サプライヤーがトヨタ工場まで輸送)」を「ミルクラン(トヨタがトラックを準備し、サプライヤーを巡回して引き取る)」方式への転換を進めている。ミルクランには、輸送効率・積載効率向上、トヨタでの在庫コントロールの緻密化から、渋滞や環境負荷削減の効果が見込まれる。

・しかし日本企業ではミルクランの実施事例は少ない。そしてトヨタでも大変な苦労が発生している。

・これまでトヨタは輸送費も含めて、復数社発注時でも部品単価を輸送費を含めた「一物一価」としてきた。サプライヤー工場は豊田市周辺に立地していたので、物流費で大きな差が出ることなく、小さな差はサプライヤーに呑んでもらっていた(協力してもらっていた)。

・しかし国内でも、東北や九州に工場立地が分散し、さらに生産移転などで、サプライヤーからトヨタ工場への距離差が大きくなるにつれて、この考えが成り立たなくなってきた。しかもドライバー不足で、サプライヤーのトラック確保にも困難が生じてきた。そこでトヨタがサプライヤー巡回で部品を引き取るトラック便方式のミルクランの導入が考案された。そして米国NUMMIでの経験を生かして、九州、東北、そして東海地区への拡大が考えられている。

・しかし九州地区でも、ミルクランに参加しているのは、まだ3分の1のサプライヤーに過ぎない。
・原因には、自社で仕立てるトラック便の運送費の方が、ミルクラン料としてトヨタから請求される金額よりも安いことがある。これまではトヨタ支払輸送費に対し、サプライヤー自社努力で安い物流業者を使って節減していた分が吹っ飛んでしまう。
・対してトヨタは、一物一価で部品本体のみを買い上げ、ミルクラン運送費をトヨタ持ちにするなどを検討している。

・しかしトヨタといえども新規契約では、サプライヤーが古くからの契約継続で実現している低価格契約はできない(ゆえに、サプライヤー従来運賃のほうが安いという、前述の事態になっている)。
・加えて歴史が長い東海地区では、ミルクランによる統合化へのトラック会社の反発もある(それで九州と東北から開始)。
・さらにトラック業界の旧来からの慣習や体質がある。元請け運送会社が下請け運送に”丸投げ”して、マージンを抜く構造もあり、トヨタに状況整理されてしまうと、立ちいかなくなるとの反発もある。
・そもそも輸送効率化は物流会社の業務量削減である。
・ゆえにトヨタも物流会社変更までは踏み込めていない。

・ミルクランによるルート変更、積載効率向上、ドライバー作業環境改善への取り組みが行われ、九州では積載効率が約2割、ドライバー走行距離も約1割強減少した。リードタイムも2~6時間削減された。
・それにはトヨタの自社努力も寄与している。トヨタは荷箱の上面がトラック荷台上で揃うように、物流を考慮して納入量の調整までを行っている(実現に1年かかった)。
・さらに空パレットの持ち帰りを容易にし、ドライバーの作業効率化やサプライヤーのパレット新規購入節減も図るなどの、トヨタ自身の努力もしている。
・そのうえで、物流会社を個別訪問し、新しい仕組みへの説得の努力を続けている。