Blog"   調達購買関連 最新トピックス
高力ボルトの不足(需給逼迫)状況が緩和、原因は仮需要(パニック買い)...様々な教訓を残す事態にー日刊工業新聞 (2019-11-21)

昨年夏ごろから不足気味になり、その後パニック買いから入手困難が発生し、様々な工事案件の遅延につながっていた高力ボルト不足が緩和してきたとの発表が国土交通省から19日にありました。

10月の調査結果として、需給動向は「やや逼迫」(3月調査では「逼迫」)に、納期は「4.7~6.5か月」(3月調査では6.0~7.8ヵ月)に緩和されたとのこと。供給不足のピークの3月頃に向かう以前の、昨年10月とほぼ同水準の値になっています。

この状況に対し、国土交通省は5月に実際の工事情報と紐付けた発注を行うための発注様式(Excelフォーム)を提示し、発注者、問屋・商社、ボルトメーカーに遵守を徹底させる対策を取りました。その結果、発注者と問屋・商社の3分の2が遵守(ボルトメーカー3社は全て遵守)したため、仮需抑制に効果があったとして「国土交通省対策により高力ボルトの需給ひっ迫状況が緩和、仮需による市場混乱が沈静化方向」との題の国土交通省のプレスリリースとなりました。

なお、7月に行った「高力ボルト実需の実態調査」では、鉄骨使用量に対する高力ボルトの必要量(実需)は、 近年(H28~H30年度)大きな変化はなく、2~2.2% で推移していたとのことで、5月にすでに発表していた仮需(パニック買い)であるとの内容がさらに裏付けられています。

一方で、昨年夏ごろから建設需要の高まりに応じて高力ボルト不足が感じられ始めたところで、国土交通省は実態アンケート調査(10月~11月調査実施)を実施し、「回答状況から3か月後も同等の結果が予想される」「余裕を持った工期設定や必要なボルトの早期発注」をと促したあたりから、騒ぎが拡大したような感触もあります。

また日経ビジネスは「中小企業が消えた産業、「高力ボルト」が足りぬ夏」という記事(11月14日)で、特にリーマンショック以降に中小企業が撤退するなどメーカーの寡占化(大手企業子会社8社に減少)と生産能力の縮小が進んだ(バブル最盛期からおよそ半減)状況で、ボルトメーカーが投資して増産に動かなかったことを指摘しています。しかし縮小が見えている国内市場での汎用品生産能力増には生産者側もおいそれとは動けないと思われます。市場縮小していく日本国内市場での新たな供給不安の一例と、購買調達担当者は念頭に置いておくべきと思います。

参考)
国土交通省対策により高力ボルトの需給ひっ迫状況が緩和、仮需による市場混乱が沈静化方向
~高力ボルト需給動向等に関するアンケート調査結果報告~ -国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo14_hh_000877.html

中小企業が消えた産業、「高力ボルト」が足りぬ夏ー日経ビジネス (2019年11月14日)
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00080/111200004/
高力ボルト不足は仮需過熱、国交省が実需を明確にした発注を業界団体に要請-日刊工業新聞ほか (2019年5月23日)ーIt's購買系
https://www.facebook.com/itscobuy/posts/2448832051814691