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予測2020: コンサルティング会社やシステムベンダーが予測する2020年という未来ーSpend Matters (2020-01-15) | ||
情報調査会社 Spend Matters Europe(UK)が、2020年のベンダーヒアリングによる予測調査結果を発表しました。引き続いて米国本社が「なんか月並みの予想だよね、でも我社ならこう予測する!!」と大見得を切った独自の予測を発表しました(海外支店の面目は大丈夫なのか?) その流れも面白く、かつ様々に語られていますので、ざっと要約してみます。 ■Spend Matters Europe(UK)による、コンサルティング/ベンダー各社ヒアリング結果 前述のように、まず情報提供会社のSpend Matters Europa(UK)が昨年12月にコンサルティングステム会社やシステムベンダー各社に2020年予測をヒアリング調査しました。その内容は、やや英国よりの視点もありますが、よくまとまっていると思います。そこでSAP(Ariba+Fieldgrass)、Jaggaer、valuaの大手システムベンダー3社、およびコンサルティング会社のEfficioとINVERTOのヒアリング結果を整理して紹介します(その他のBasware, VORTAL, State of Fluxは割愛)。 ●SAP Ariba&Fieldglass 2019年5月にSAP Intelligent Spend Groupを結成し、統合した製品と解決策の提供を図ることを発表したSAPの各幹部へのヒアリングから抽出された、2020年の6つの予測が整理されています。その予測は、以下。 ・データは単なる分析ツールではなく、意思決定ツールとして使われるようになる ・持続可能な調達がもっと盛んになる ・(発生が想定される)景気後退期には、場面・状況に応じた適応性と対応性が鍵となる ・事業貢献を追求しつつ、「意図ある調達」による社会や環境への対応も重要 ・サプライヤー管理機能に人工知能技術が全面的に組み込まれる ・企業は購買部門に付加価値提供アプローチを採ように求める(単なるコスト削減部門でなく) 参考) 2020 predictions from procurement software experts SAP Ariba, SAP Fieldglass and moreーSpend Matters https://spendmatters.com/2020/01/03/2020-predictions-from-procurement-software-experts-sap-ariba-sap-fieldglass-and-more/ ●JAGGAER (統合システムベンダー) (2020年1月6日) 2018年12月に、日立を半場代理店(Reseller)として日本市場に進出したJAGGAERですが、製品の方向性も踏まえて以下のような予測を示しています。 ・拡張分析(AI活用分析)で強化された分析機能がシ業務のどこでも使えるようになる ・社内外データの傾向に基づく予測分析が将来予測のために使われるようになる ・契約コンプライアンスとそのリスク分析の重要性が高まり、広範かつ厳格な精査が要求される ・2020年以降の購買業務は「AI支援型調達(intelligent procurement)」から「AIとRPAなどの人手削減の自律調達(autonomous procurement)」へと向かう 参考) The 2020 Procurement and Supply Predictions from the Market — JAGGAER https://spendmatters.com/uk/the-2020-procurement-and-supply-predictions-from-the-market-jaggaer/ ●Ivalua (システムベンダー) (2019年12月24日) 機能の作りこみ柔軟性などで急成長株のIvalua(日本未進出)は、業務面を意識した3つの予測を出してきました。 ・米中摩擦、大統領選挙など世界の不確実性はまだ継続する ・環境配慮型サプライチェーンの導入は、企業の差別化要因になる ・グローバル景気後退が、購買部門を暗黒時代に立ち戻してしまうかもしれない(不況になってしまうと、購買部門は付加価値提供者ではなく、コストカッター役に戻されてしまうかも) 参考) The 2020 Procurement and Supply Chain Predictions from the Market – Ivalua https://spendmatters.com/uk/the-2020-procurement-and-supply-chain-predictions-from-the-market-ivalua/ ●Efficio (コンサルティング会社) (2019年12月27日) 英国を基盤に主に欧米展開する独立系購買コンサルティング会社のEfficioは、以下のように業務トレンドを予測しています。 ・システム機能の新規導入から使いこなしへ: 目新しいシステム機能の新規提供が飽和し、以後はどのような業務範囲にそれを適用し、その知識活用を進めていくかの段階に入る ・要求部門に購買業務をどのように有効に行わせるかに重点が移る: 要求部門のデジタル化成熟度が向上してくると、購買部門が実作業しない要求元完結の購買業務が増える。購買部門の役割はそれをどう有効に行わせるか移る ・購買部門が環境や持続可能性に対する中心部門となる 参考) The 2020 Procurement and Supply Predictions from the Market — Efficio https://spendmatters.com/uk/the-2020-procurement-and-supply-predictions-from-the-market-efficio/ ●INVERTO (コンサルティング会社) (2020年1月8日) INVESTOはm2016年にボストンコンサルティング(BCG)が買収したドイツの購買コンサルティング会社です。 今回は、予測というよりも「2020年はこういう方向を目指そう」の事項を5つ挙げています。 1). 迅速なソーシングの実践: 市場やカテゴリの動向の先行的見極め力、業務範囲の拡大とその効率的な提供力、新しいやり方での業務提供モデルの開発の3つを強化しよう 2).ゼロベース文化の醸成:ゼロベース予算方式での計画立案を導入し、以前に引きずられないようにしよう 3).運転資本(キャッシュフロー)重視: 日本の手形割引(ファクタリング)も含まれる、サプライチェーンファイナンス(キャッシュの早期獲得策)の積極活用も考えよう 4).人々(社会)と地球と企業利益の3つに影響する持続ある調達を重視しよう 5).長期的なサプライヤパートナーシップによるイノベーションの引出しを図ろう 参考) The 2020 Procurement and Supply Predictions from the Market — INVERTO https://spendmatters.com/uk/the-2020-procurement-and-supply-predictions-from-the-market-inverto/ ボストンコンサルティング、中堅購買コンサル会社 Invertoを買収 (2016年9月29日) ー It's購買系 https://www.facebook.com/itscobuy/posts/1272869929410915 ===== ■Spend Matters(米国本社)の「現在本当に問題なのは、こういうところではないですか?」 Spend Matters(米国本社)が、このUK(英国)の調査結果のサマリーを提示した後、「一般に言われている予測はそうだけど、我々の本音はこう考える」とした独自予測の持論を1月8日に発表しました。「2020年のデジタル購買: 重大課題と予測-はじめに(2020 Digital Procurement Series: Predicaments and Predictions, an Introduction)」(リンク先の記事)という記事です。 内容は、まず最初に「一般に他社が語っている予測事項はこんなところだよね」と羅列して見せます。 ・AIの熱狂は沈静化するが、効果ある特定領域での実用化が始まる ・(作りつけの)クラウド型統合システムの需要は継続するが、賢く優れた企業はサービスプロバイダーをうまく組み合わせた最適システムの構築を図るようになる ・Amazonが新たな成長分野に目を向けている間は、デジタルディスラプションは続く ・IPO目的ではなく、大企業から脱出するためのM&Aが続く ・などなどなど(Yada, yada, yada) その上で「悪くとらないでね(Don’t get me wrong)、でも月並みな内容だよね。しかし昨年デロイトのグローバルCPO調査も手伝ったSpend Mattersはこう考える」と続けます。そして購買業務(特にシステム化)の真の解決すべき課題は以下のではないかと指摘します。 ・品目カテゴリ専用ソリューションを細切れ導入するのではなく、各品目の要件にも全般対応できる統合システム機能の一括導入検討 ・重箱の隅をつつくのではなく、供給ネットワーク全体モデルに対応した直接材購買サポート機能 ・単価表や単純な内容(単価x工数など)に留まらないサービス購買サポート機能 ・様々なやり方、ツール、ベンダーを活用してのテール支出への対応 ・サプライヤーデータ、契約データが分散してしまっている状況への対応。 ・B2Cでは普通なのにできていない、最低価格検索/価格比較機能 ・品目カテゴリー戦略立案支援機能が稚拙で、さらにe-Sourcingに連携できない状況 ・供給/サプライヤーリスク管理—但しさほどカネを掛けないで ・契約金額管理だけでなく、法律準拠の文書管理機能を備えた契約管理機能 ・Googleを越えるサプライヤー探索機能、および調査会社/コミュニティから入手可能な情報を越える市場インテリジェンス提供機能 ・クラウド環境への移行の際の、既存ERPベンダーをどうするか(どう連携するか)の対応 ・サプライヤーが購買システムの各機能に一元窓口アクセスできるポータル機能の提供 ・Pカード(コーポレートクレジットカード)、電子振込、さらに紙の小切手よりもましな支払機能 ・業界/品目の標準的な仕組みと購買システムをうまくデータ連携できる機能 「この後は有料ページで詳細解説するから...」となってしまうのですが、購買システム化のポイントを考えるに興味深い指摘も多くあると思います。 |