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予測2020: 10個の購買重要予測、想定される企業要件に対応する業務提供モデルをどうすべきか-Hackett Group (2020-01-15)

調査会社ハケットグループ(The Hackett Group)の2020年購買重要課題レポート(2020 Procurement Key Issue Report)は、2019年12月13日に発表されました(従来は、CPO Agendaの名称で重要課題調査結果をまとめたものを毎年1~2月に発表していましたが、それとは体裁が違うレポートが早めの時期に発行されました)。

ちょっとだけ、ハケットグループ独自の購買業務のあり方論に触れねばならないところがありますが、いわゆるグローバルの購買実務ベストプラクティス企業のほとんどが使っている調査会社ゆえに、要約してみます。

レポートは、以下のような出だしで始まります。
購買部門は2020年の今、両面的な課題に直面している。社内外両方でのコスト削減と、付加価値追加が求められているのだ。デジタル経済下では、単なるコストカットだけでは不十分だ。激しい競争に対応するには、企業全体レベルと購買業務機能レベルの双方での変化に即した不断の自己変革が必要となる。購買部門はプロセス自動化で効率化で業務コストを削減しなければならない。それと同時に、購買部門は事業部門の戦略敵アドバイザー/パートナーの役割を強め、新たな一連の価値を提供していくべきだ。ハケットグループの年次重要課題調査によれば、より優れた分析の実施、支出に対する影響力の増強、カテゴリー管理が生み出す価値増強が購買部門の注力すべき領域となる。

その上でレポートは、以下の3つの部分で構成されています。
1. 2020年の購買業務の10個の重要課題
2. 2020年の企業全体の課題
3. そのための購買業務の提供モデルの改善

1. 2020年の購買業務の10個の重要課題
ハケットグループは、購買業務の重要課題項目を設定し、それに優先順位を付与した「購買業務課題マトリックスモデル」を定義し、その結果を毎年発表しています(重要課題は基本的に同じですが、期間を経るると適宜入れ替えも生じます)。

今回は、以下の10個が、購買業務の2020年の重要課題になるであろうと予測しています。
1).購買業務の迅速性向上(IMPROVE PROCUREMENT AGILITY)
2).事業部門に信頼されるアドバイザーになる(BECOME A TRUSTED BUSINESS ADVISOR)
3).事業部門のニーズに合致する人材・スキルを育成する(ALIGN SKILLS AND TALENT WITH BUSINESS NEEDS)
4).購買システム環境の最新化(MODERNIZE PROCUREMENT APPLICATION PLATFORMS)
5).分析・レポート機能の改善(IMPROVE ANALYTICAL AND REPORTING CAPABILITIES)
6).業務効率化による業務コスト削減(IMPROVE COST EFFICIENCY)
7).購入コストの削減(REDUCE PURCHASING COSTS)
8).戦略ソーシングによる支出に対する影響力強化(INCREASE SPEND INFLUENCE WITH STRATEGIC SOURCING)
9).カテゴリー管理による創出価値の増大(OBTAIN MORE VALUE THROUGH CATEGORY MANAGEMENT)
10).業績測定能力の改善(IMPROVE PERFORMANCE MEASUREMENT CAPABILITIES)

特に上記の1)~5)が問題の程度(あるべき姿との乖離)が大きい重大問題とされます。
なお、上記の項目は、2019年版の「2019 CPO Agenda: Building Next-Generation Capabilities」では「FIG. 1 Procurement critical development priorities in 2019」のように示されてきました。それが今回は「Fig. 1 Procurement function key issues in 2020」のように形を変えてしめされています(2020年版はちょっとわかりにくくなってしまったように思います)。


2. 2020年の企業全体の課題
ここで視点が変わり、企業経営全体での要請に対して、購買部門は2020年にどう応えるべきかかが取り上げられていきます。
まず企業経営面全体での主要課題に何が来るかが想定されます。以下の項目が挙げられます。

1).一般管理費の最適化(SG&A cost optimization)
2).顧客志向への改善(Customer-focus improvement)
3).製品・サービスポートフォリオの拡張(Product or service portfolio expansion)
4).データ管理・分析能力の向上(Data management or analytical capability improvement)
5).システム基盤の増強もしきは新システム導入(Major technology platform upgrade or new technology introduction)
6).デジタル企業変革(Enterprise digital transformation)

3.そのための購買業務の提供モデルの改善
その企業全体の要請に応えるにはどうしたらよいのかが次の論点となります。ハケットグループが提唱する「サービス提供モデル(service delivery model)」の5つの構成要素ごとに論じられます。

要素1:業務提供の仕方(Service design)
まず最初に、購買部門はどのような業務を行うかの「業務提供の仕方(Service design)」が取り上げられます。やはり業務の自動化が重要な検討ポイントということで、各業務の自動化の状況が提示されています。
今後日本でも注目が集まるインボイス方式導入に関係する「Payment」や「Account Payable」を主体に業務オペレーション系は自動化が進んでいます。一方でソーシングやサプライヤー管理は自動化ガスsんでいませんが、契約管理が意外に自動化率が低いように思えます。

要素2:人材(Human capital)
次に取り上げられるのが人材です。デジタル系人材の状況が示されていますが、当たらに育成必要と回答されているのが、データ分析系ではなく、RPAプログラマやセキュリティ専門家が上位に来ています。

要素3: 情報技術(Technology)
そしてシステム機能ですが、クラウド型購買システムの最も大きく増加を予想されています。一方で、使いこなし満足度では、RPAが最低で欧米でも使いこなし満足度は不十分とされています。

要素4: 分析・情報管理(Analytics and information management)
情報活用の観点では、その元になるデータの精度、あるいは所在がバラバラで使いこなせない状況がトップ課題になっています。

要素5:組織とガバナンス(Organization and governance)
組織面では、購買組織のグロバーバル展開強化がトップで、次は要求元自身で購買業務を実施してもらうSelf-Service方式の強化が続いています。

要素6:業務の外部化・アウトソーシング(Service partnering)
購買業務のアウトソーシングの狙いでは、自社人材をより付加価値業務に向かわせるためがトップになっています。

なお余談ですが、真っ先に削減対象となりがちな一般管理費について、削るばかりが能ではない、価値創造の源泉として5つの使い方があるとの論考を昨年11月に発表したのが、コンサルティング会社のマッキンゼーです。購買業務に直接に関係しませんが、多くの観点が示された、付加価値追及の観点からは興味深い内容と思えます。

参考)
2019 CPO Agenda: Building Next-Generation CapabilitiesーThe Hackett Group
https://www.thehackettgroup.com/key-issues-pro-1902/

Driving value creation through G&A: Five ways to rethink your approachーMckinsey (2019年11月)
https://www.mckinsey.com/business-functions/operations/our-insights/driving-value-creation-through-ga-five-ways-to-rethink-your-approach