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資金効率で考えると、一般サプライヤよりも下請けの優位性が見えてくる - 財経新聞 (2020-01-28)

昨年末~年初にかけて、日本特有の下請けシステムを「資金効率」「総資金量」の観点で考えると、その優位性がわかってくるといった内容の記事が6回にわたって連載されました。記事内での主張の分散がややありますが、取引先の優位性を考えるときの視点を提供してくれると思えます。

概要は以下。
・日本独自方式の「下請けシステム」からの調達と、一般サプライヤーからの調達の優位性を比較してみる。特に海外のメガサプライヤーは、本当に安いと言えるのか。

・自動車産業のEV化は、従来下請けに依存していたエンジン・ミッションなどの機構系部品の需要減を招き、下請けへの依存度が低下する。また近年「系列は足手まといでメリットがない」とされることもある。

・しかし優位性を比較するには、単価で見るだけではなく、資金効率で考える必要がある。
・例えば海外メガサプライヤーにロット発注すると、在庫そのもので資金が寝てしまうことに加えて、最古管理コストが発生する。近隣下請けであれば、より小ロットに必要時納品ができるといった利点がある。

・単価だけでみるのではなく、トータルコストで優劣を判じなければならない。

・下請け調達が自社内製よりも有利な要因としては、以下がある。
- 実質「親分・子分」関係を構築して、生産量に柔軟に対応できる
- 設備投資資金、技術開発資金、管理要員資金は支払代金に含めるにせよ、自社での有無利子借入負担なし
- 取引先が親会社より高度な生産技術をもち、あるいはその開発に自主的に取組んで、安く作る努力をしてくれている場合もある(コスト削減に励んで、下請け先の利益を少しでも増やそうとの動機もある)
- さらに下請け企業の「忖度(特に理由なく)」で親企業よりも賃金を低く抑えてくれ、その分価格が安くできる
- 技術開発や製品開発でも、下請けとは密接な関係の上に進めていける

・このような点から、トータルコストでは海外メガサプライヤーに必ずしも劣らない。

・一方で親会社が安定的に継続発注してくれれば、間接要員が大幅に少なくでき、営業コストが不要になるメリットを下請け先は享受できる。

様々な条件で有利不利の状況の変動はあると思いますが、総じて興味深い記事に思いました。

参考)
【系列は崩壊するのか?(1/6)】日本の生産性低下の衝撃:世界1位から15位にー財形新聞 (2019年12月30日)
https://www.zaikei.co.jp/article/20191230/546468.html

【系列は崩壊するのか?(2/6)】ハードからソフトへ EV化がCASEの戦場へ誘うー財形新聞 (2019年12月31日)
https://www.zaikei.co.jp/article/20191231/546469.html

【系列は崩壊するのか?(3/6)】下請け(系列)制度は日本独自のもの ー 財形新聞 (2020年1月1日)
https://www.zaikei.co.jp/article/20200101/546474.html

【系列は崩壊するのか?(4/6)】隠されたメリットは下請けの立場の給与水準 ー 財形新聞 (2020年1月2日)
https://www.zaikei.co.jp/article/20200102/546670.html

【系列は崩壊するのか?(5/6)】系列を株式保有割合でなく「ビジネスモデル」で理解せよ ー 財形新聞 (2020年1月3日)
https://www.zaikei.co.jp/article/20200103/546673.html

【系列は崩壊するのか?(6/6)】下請け(系列)システムを捨てることは自殺行為だー 財形新聞 (2020年1月4日)
https://www.zaikei.co.jp/article/20200104/546674.html