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国内生産停止に伴い、自動車各社がサプライヤー支援を検討...ではどのような支援が正しいかわかっていますか? (2020-03-31)

今回の事態では、まず中国からの部品供給途絶が発生しました。その結果、買い手企業の特定製品が製造不可能になります。しかし部材在庫(含:移送中)などを調べれば、まだ製品生産ができるかもしれません。そこでどの顧客向けのどの製品をどういうスケジュールでどこまで製造するかが決定されます。

その上で、供給途絶部品以外(製品は多数の部品で成立します)のサプライヤーに対しては、納入停止を依頼しなければなりません。その分サプライヤーの売上が減り、固定費は発生し続けます。さらに製造リードタイムが長いものは、サプライヤーが部品の材料を発注済であったり、生産途上で半製品状態になってもいます。

加えて、供給途絶部品の状況は刻一刻と変わります。調達可能になった途端、納入停止サプライヤーに急遽再納入の依頼を出さねばなりません。これも、既存生産(工場稼働)スケジュールの変更をもたらすなど、サプライヤーの混乱要因になります。

さらに今回報道のように景気が悪くなれば、買い手企業の生産が減少し、それはサプライヤーの発注減少になります。サプライヤーの売上減少や手配済み在庫・半製品の負担が同様に発生します。

サプライチェーンでの連携とは、このような発注と供給の連携を取ることに他なりません。

そしてサプライヤーへの支援とは、「パートナー」に、このように連携上の迷惑を掛けていることへの「補償」が第一義です。その具体的な手段の1つとして、資金繰り支援などがあります(当たり前のことを書いていると思われている方も多いでしょうが、下記状況につきご容赦ください)。

しかし最近、マスコミ・評論家筋などから、おかしな提言が出てきています。
買い手企業が責を負わない特殊状況でない限り、以下のように大変な”悪手”になり、新コロナ肺炎危機以降のサプライヤーとの信頼関係を壊すことになりかねません。

誤った提言#1:取引先に資金貸与を行う (企業間である以上無利子無期限貸与は無い)
⇒「借金の斡旋をする前に、いつどれだけ発注してくれるかを明確にするのが先だろう」と文句を言われる

誤った提言#2:支払早期化の見返りに値引き条件交渉を行う
⇒ 「発注減で迷惑かけた上に、値引きかよ」と文句を言われる
※トヨタが発注量が減少しているサプライヤー対策として、4月の定例コストダウン時期を7月まで延期するとの話も出てきているようです。

誤った提言#3:サプライヤーの状況伺いの訪問や電話コンタクトを行う
⇒「手ぶらで来るのではなく、いつどれだけ発注してくれるかを明確にするのが先だろう」と文句を言われる」

緊急時の失敗は、長いこと尾を引きます。慌てて短慮に陥っては長年の信頼を壊します。そうならないように支援・補償の検討は、慎重に考え、将来に禍根を残さないようにしなければなりません。そうなってしまっては大変な損失です。

東日本大震災の時には、論考「供給クラッシュ~全体破断状況にいかに対処すべきか」などの記述・書籍化などで、企業経営全体観点からの議論がもっとあったように思います。しかし約10年間を経て、購買業務限定の狭い視野に我々は退化したかもしれず、これを機会に向上を図るべきかもしれません。

※当たり前のことを長々と書くなとの向きは、どうかご容赦ください。

参考)
自動車メーカー各社/新型コロナで部品調達困難、生産調整へーLNEWS(2020年3月30日)
https://www.lnews.jp/2020/03/m0330404.html