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重要調達品にはサプライチェーンのストレステストを課すべきだーHarvard Business Review (2020-04-30)

MITのデビッド・シムチ‐レビ(David Simchi-Levi)工学部教授の論考「重要調達品のサプライチェーンにはストレステストが必要だ(We Need a Stress Test for Critical Supply Chains)」がハーバード・ビジネス・レビューで取り上げられました。シムチ‐レビ教授は、アクセンチュアとサプライチェーン領域で提携関係にある人物で、サプライチェーン(オペレーション)領域では、相応の大物の認識です。

ストレステストとは、銀行が不測の事態に十分な耐久性を有するかを事前に確認するもので、不足が見つかれば対応策を求められる、今までは金融の世界での内容でした。

しかし、新コロナ禍で医療資材(PPE:Personal Protective Equipment)の不足が発生している状況は、あまりにギリギリまで余裕なく効率化したグローバル・サプライチェーンになっているためである。しかし不測の事態発生には、ある程度の余裕と耐久力を持たせておくことが必要であり、ストレステストを実施して耐久力・回復力を測り、不足があれば補っておくべきではないかとの、政府向け提言をしています。
(リーン・サプライチェーンは東日本大震災で破綻したよね、との念押しもしながら)。

そこでシムチ‐レビ教授が、フォードにその後導入したサプライチェーンのストレステスト手法を重要な医療資材にも適用すべきではないだろうかと主張します。政府向けの提言の形を取っていますが、すべての業界のサプライチェーンにも適用可能な手法です(事実、フォードが棄損導入事例)。

そこでは「復旧時間(time to recover (TTR))」と「途絶後供給維持可能期間 (time to survive (TTS))」の2要素に着目します。そして様々なシナリオを想定したうえで、サプライチェーンの一部分(ノード)の復旧時間(TTR)が、サプライチェーンの途絶後供給可能期間(TTS) を越えないことを検証せよ。そしてTTR>TTSが見つかったら、その解消を行っておけ、というものです。

また4月13日のMIT Sloan Reviewの論考「グローバルサプライチェーン復旧の3つのシナリオ)(Three Scenarios to Guide Your Global Supply Chain Recovery)」では、シムチ‐レビ教授が2014年以降論じてきた手法が説明されています。

ある意味、システム工学の信頼性理論の応用形ですが、理論が体系化されているようで、アクセンチュアと提携関係にあり、フォード(2013年~)などの適用事例があるとなると、今後注目が集まるかもしれないと思います。

参考)
ストレステストとは 銀行の健全性・耐久力を点検 (きょうのことば)-日本経済新聞 (2019年11月4日)
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO51772950T01C19A1NN1000/

Three Scenarios to Guide Your Global Supply Chain Recovery ー MIT Sloan Review (2020年4月13日)
https://sloanreview-mit-edu.cdn.ampproject.org/c/s/sloanreview.mit.edu/article/three-scenarios-to-guide-your-global-supply-chain-recovery/amp