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政治とかの感情論に流されずに冷静に考えよう、中国は25%も高いかも!!-PwCレポート (2020-07-31)

日本でも補正予算に示された経済産業省の方向性など、中国一極調達に対する危惧が示されて います。一方で、既存サプライヤーを切り替える負荷やリスクを考えて、一気の実施に及び腰になる気運も生じがちです。また、新コロナ禍のパニック感情もありました。

しかしそのような状況はあるものの、特に7月1日にUSMCA(新NAFTA)発効を契機に、より冷静に根拠を明確にして、調達先の判定を行っていこうという方向性が、米中貿易摩擦の影響の渦中の米国企業で盛り上がってきています。

その中で、最近引き合いに出されることが多いのが、PwCが7月1日に発表しレポート「Beyond China: US manufacturers are sizing up new and cost-efficient global footprints(中国(集中)を越えて:米製造業は、コスト効果に優れた新たなグローバル調達地域編成を進めている」です。

このレポートでは、中国、メキシコ(MSMCAで関税面が有利化)、アジアの他のLCC(Low-Cost-Countries)を、調達品の特性(特にコスト構造)面で比較します。

まずこれまでの一大調達先であった中国の利点として、労働力のスキルセットの高さや製造企業が連携できるエコシステム、物流などのインフラ面の優位性は認めています。ゆえに、高付加価値製品は中国に留まることの妥当性があると考えています。耐久力を高めるとなれば、「China+1」になるのではとします。
また、中国場向け製品(“China-for-China” model)の生産・部材調達は、地産地消で中国を離れることはないとしています。

しかし、付加価値が高くない汎用品で人件費コスト比率が低いものは、米国製造品と海外製造品で価格差は大きくありません。人件費コストの影響度が少ないゆえです。
一方で、付加価値が高くない汎用品で人件費コスト比率が高いものは、中国の人件費高騰が影響してきます。メキシコや他のアジアLCCに切り替えた場合、25%程度のコスト削減が見込めるとされています。

このように、コスト構造の特性も考慮した上で、今こそ再見直し(Re-balance)する必要性が説かれます。

その上で、品目カテゴリーごとに「世界一極調達(Global single-source)」、「複数の調達地域確保(Global +1)」、「地域内暢達(Region-for-Region)」、「ローカル暢達(Local for local)」の方向性を明確にし、世界一極集中にせざるをえないものは、特に対策を入念に検討して万一に備えるなど、示唆に富む内容が展開されています。

とはいえ、これはずっと調達品目のグローバルソーシングをどう行うかの検討として、多くの日本企業が勧めてきたアプローチと大差はないと思われます。

もう一度、変化した状況を考慮に入れてきちんと見直そう、「デュアルソース化により、耐久力とコスト削減の両立が実現できる場合もある(A dual sourcing strategy improves resiliency, yet can trim cost savings)」のだからというのが、このレポートのメッセージかとも思います。この時期に役立つ内容と感じます。

参考)
Beyond China: US manufacturers are sizing up new and cost-efficient global footprints-PwC (2020年7月1日)
https://www.pwc.com/us/en/library/fit-for-growth/supply-chain-resiliency.html
https://www.pwc.com/us/en/library/fit-for-growth/assets/ffg-industrial-supply-chain-footprint.pdf

Supply Chain News: Leaving China Sourcing is Hard, but for Some Companies the Savings could be Significant-Supply Chain Digest (2020年7月28日)
http://www.scdigest.com/ontarget/20-07-28_pwc_report_lower_costs_leaving_china.php?cid=17023