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高騰する物価、突如起こる物不足、不安定化する世界~なにかがおかしいとの懸念-ブルームバーグ他 (2021-02-26)

原油価格を始めとして、グローバルに見ると全般的な物価上昇が報じられています。加えて、すでに顕在化している半導体などに加えて、米国で鋼板調達難の話が巻き起こるなど、コロナによる需要縮小で絞り込んだ生産の急遽回復不全による突発的な物不足の顕在化も生じています。 留意が必要な状態になっているかと思われます。

■原油価格が1年1ヶ月ぶりの高値に到達(WTI原油先物: 約63ドル/バーレル)
2020年10月末の35.79ドル・バーレル(WTI原油先物)を底値に一本調子に値を上げているWTI原油先物価格ですが、現在63ドルほどに到達しました(ドバイ先物も同様の傾向)。1月のサウジの自主減産表明(2~3月の日量100万バレル自主減産を発表)で50ドルを越えましたが、現在はさらに3割上昇しています(政治的な要因をあげる報道もあります)。原油価格動向は物価指数と連動するため、値上げ圧力となる可能性が大きいです。

■米国価格指数(原材料や企業サービスを含む)は、2009年以降最高水準に
1月の日銀企業向けサービス価格指数(2月22日発表)は、宿泊、不動産賃貸、広告などの影響で前年比0.5%の低下となりました。一方で米国では原材料価格に加えて、ロジスティックスなどのサービス価格も上昇した結果、2009年の公表開始以降の最高値に達したと、IHS Markitが2月19日に発表しました。この状況について、良好な景気回復を認めながら、IHS Markitのチーフエコノミストは「企業のコストが急上昇し、商品やサービスの販売価格が調査史上最高のペースで上昇するかもしれない」との懸念も示しています。

参考)マークイットの米価格指数が上昇、2009年のデータ開始以降で最高水準
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-19/QOS84IDWLU6M01
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-02-19/ihs-markit-s-u-s-price-gauges-reach-highest-in-records-to-2009

この傾向は英国でも同様で、CIPSの商品指数の図も軒並み前年より価格高騰。
https://www.cips.org/supply-management/analysis/2021/january/sm-commodities-index---december-2020/

■米国で鋼板が極度に不足、値段も底値から1.6倍に
そして2月23日には、ロイターが米国では「鉄鋼市場でこれほどの混乱を見たことがない」との声が上がる程の鋼板(熱延も冷延も)不足(価格も昨年8月から1.6倍に高騰)が発生していることを報じました。昨年の需要減から休炉した国内製鉄所の稼働回復が需要の伸びに追いついていけないとのことです(一部企業では、鋼板が調達できずで顧客から受注できない事態も発生)。
トランプ関税が付加されても、輸入したほうが安値で確保できるとの話も紹介されています。

一方で、日本についてはニュースイッチ(日刊工業新聞)が、中国の景気回復状況を見るに、鋼材価格は高止まりする予想の記事を出しました。

参考)鋼材価格を形成する背景には…「鉄鉱石や石炭、鉄スクラップとも中国の需要次第」-日刊工業新聞(2021年2月18日)
https://newswitch.jp/p/26040

■世界食料価格が6年ぶりの高水準で、さらに上昇見込み
加えて、国連食糧農業機関(FAO)の2020年12月の食料価格指数は、昨年5月底値から18%上昇し、コロナ前を越えて6年ぶりの高水準に達しました。さらに、コンサルティング会社Kearneyの今年の年次経済トレンドレポート「The great shakeout: Global trends 2020–2025 executive summary」の「Trend #4: 食糧不安の増加(Rise in food insecurity)」では、食料価格の2025年までの直線的上昇を予測しています。コロナ禍の経済混乱で所得低下した新興国(原材料供給先)の政情不安定にもつながる懸念を、2月8日のロイター記事同様に示しています。

参考)
世界食料価格が6年ぶり高水準、今後さらに上昇の公算大-ブルームバーグ(2021年1月8日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-07/QMKAWYT0G1L201

The great shakeout: Global trends 2020–2025 executive summary-Kearney
https://www.kearney.com/web/global-business-policy-council/global-trends/

Analysis: Food price spikes see inflation rear its head in emerging markets-Reuter(2021年2月8日)
https://www.reuters.com/article/us-emerging-markets-inflation-analysis-idUSKBN2A8195
https://jp.sputniknews.com/business/202102088136926/

コロナ禍からの回復過程で生じる不安定さに十分に留意していく必要が出ている様子です。