Blog"   調達購買関連 最新トピックス
マトリックスでの優先順位付けの新手法など、「買えない&高い」の現状への3つの提言-マッキンゼー(2021-08-15)

供給が十分に確保できず、さらに購入品の価格が高騰していく現在の状況は、海外でも大きな課題として捉えられています。コンサルティング会社マッキンゼーも、次の新たな手法や概念を提示する論考を次々と発表しました。

・部門横断で一元対応する体制「購買ナーブセンター(司令塔)」を確立
・価格上昇のしやすさと実際の価格状況のマトリックス手法で見出した高優先度品目から対応
・サプライヤーの購入品の明細コスト(Embedded Cost)まで追求

◆部門横断で一元対応する体制「購買ナーブセンター(司令塔)」の確立
ナーブセンター(Nerve Center)は、コロナ禍で生じた混乱を乗りいるための全社横断の司令塔として、マッキンゼーが多く提示してきた概念です。そしてここにきて「購買ナーブセンター(司令塔)」の概念が新たに提示されました。従来のサプライチェーンの司令塔の価格重視の変形版が出てきた用な感じです。論考では、現在のようなインフレ圧力に直面した場合には、部門横断で一元対応する「ナーブセンター(司令塔)」アプローチで、部門を超えたコラボレーションを強化することが必要とします。

そして「ナーブセンター(司令塔)」として、以下に取り組む必要があるのではないかとします。
・直近では、供給確保と価格の安定性の確保にまず取り組む
・しかし中期的には、コスト最小限化の幅広く様々な手段を導入する
・そして将来を考えて、それをきちんと制度化する

◆価格上昇のしやすさと実際の価格状況のマトリックス手法で見出した高優先度品目から対応
しかし闇雲に取り組んでも非効率になります。一元的な司令塔で、取り組み優先順位を明確にした対応をすることが重要として、その判別マトリックス「エクスポージャー(価格変動の影響度)」マトリックスによる優先順位付けが提案されます。

マトリックスは次の2軸から構成されます。
・価格上昇の影響度(Degree of Exposure):
 スポット購入や市況連動価格契約のものは「高」、市況連動しないものは「低」
・価格上昇の度合い(Inflation)

そして価格上昇の影響度が高く、価格が実際に上昇しているもの(防衛品目(Defend))から、優先的に取り組むことが推奨されます。各人が担当品目に均等に注力するのではなく、優先度に応じた取り組み順の見直しが重要になるとの考えと思います。

◆サプライヤーの購入品の明細コスト(Embedded Cost)まで追求
さらに価格を直接の購入品の明細(材料費や加工費などの区分)レベルで留めるのではなく、その購入品の部品レベルの明細(Embedded Cost)まで追求しようと、価格明細の追求レベルをさらに細かくすることを求めます。

購入品の部品レベル明細(Embedded Cost)を実際に把握できればよいのですが、もし把握できなくても「この材料が使われているはずだから、価格はこうならないか」、あるいは「購入品の部品レベルで変更できないか」などの推定を、部門横断の司令塔で実施して、改善につなげることが重要なのではないかと提案します。

日本企業では既に実施している部分もあるかと思いますが、今一度見直してみる機会にもなるかと思います。

参考)
コモディティ価格の高騰を抑制する取り組み-Mckinsey (2021年7月13日)
(Getting real about mitigating price inflation in commodities)
https://www.mckinsey.com/industries/chemicals/our-insights/getting-real-about-mitigating-price-inflation

値上げと不安定さへの対応: 購買がリードするときが来た-Mckinsey (2021年7月19日)
(Responding to inflation and volatility: Time for procurement to lead)
https://www.mckinsey.com/business-functions/operations/our-insights/responding-to-inflation-and-volatility-time-for-procurement-to-lead

不安定な市場環境にあって、サプライヤー購入品のコスト明細(Embedded Cost)は隠れた宝だ-Mckinsey(2021年8月2日)
(In volatile markets, embedded product costs can be a hidden treasure)
https://www.mckinsey.com/business-functions/operations/our-insights/in-volatile-markets-embedded-product-costs-can-be-a-hidden-treasure