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無理強いしたら決算まで歪んだ...コスト削減偽装スキャンダルが68億円の巨額罰金でようやく決着-Financial Times他 (2021-10-06)

クラフト・ハインツの購買部門が達成成果を改ざん偽装した結果、財務公表数値まで大きく歪み、決算修正に追い込まれた2019年の歴史的大スキャンダルが、6,200万ドル(約68億円)の罰金でSEC(米国証券取引委員会)と決着したとの報道が9月はじめに流れました。2億ドル(200億円)の偽装(過少申告利益額)がこの結果を招きました。

そもそもの発端は、2015年のハインツ社によるクラフト・フーズ社の買収でした。合併がバークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルが過半数の株式を持つ形で行われ、規模拡大による効率経営も狙いとされました(その他としてグローバル市場進拡大、規模拡大による有利な購買などもあげられました)。そしてその一部として、ゼロベース予算(Zero-base Budgeting: ZBB)などの徹底したコスト削減策を全社的に導入されるなど、かなりの締め付けがなされたとされています。

それに対して、購買部門の一部従業員が独自で達成成果の偽装報告を行い、その調査が進むうちに、当初の偽装金額は約10倍拡大し、大幅な決算発表修正に至りました。また偽装は、前払金や割引額の計上時期の操作によってなされたとされています。

調査は現場の独自判断で行った結果となりましたが、要するに以下のような状況だったのかと思われます。
・押し付けられた目標額から身を守るための”防御行動”が不正を生み出した
・目標設定した経営陣と現場が適切にコミュニケーションできていなかった

両社とも、購買領域で低コスト国調達や電子オークション、内外製方針の見直しなどでベストプラクティスにもあげられてきた企業でしたが、そのような企業でも状況が揃えば現場不正が起こる「良くない事例」を示してしまったようです。

なお、SEC(米国証券取引委員会)は元COOのエドゥアルド・ペレイソン氏と元CPOのクラウス・ホフマン氏にも罰金・罰則を課しました。

参考)
Kraft Heinz fined $62M after SEC says procurement team misled finance-Supply Chain Dive
https://www.supplychaindive.com/news/sec-fines-kraft-heinz-62m-says-procurement-misled-finance-team/606258/

Kraft Heinz CPO 'put cost savings above compliance with law'-CIPS(Supply Management)
https://www.cips.org/supply-management/news/2021/september/kraft-heinz-cpo-put-cost-savings-above-compliance-with-law/

購買コスト削減の優等生とされたクラフト・ハインツで購買領域の不適正会計発覚、25億円の決算修正-ブルームバーグ (2019年2月27日)
https://www.facebook.com/itscobuy/posts/2314145755283322

クラフト・ハインツの調達での不正範囲が拡大、3年弱で約230億円の決算修正へ-Supply Chain Dive他 (2019年5月12日)
https://www.facebook.com/itscobuy/posts/2429602777070952