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"勝ち組"ダイキン、部品不足を軽微化し、最高業績確保の見通しを発表-日経クロステック他 (2021-11-25) | ||
コロナ禍の換気への関心の高まりや在宅化もあり、空調機器需要が高まった中でも、部品不足を軽微に止め、製品の”弾切れ”を起こさなかったダイキン工業が、過去最高の売り上げと営業利益の達成を発表しました。業種は異なりますが、自動車では月間生産3割減などの"超”非常事態が生じてきた状況下、ダイキンの成功事例はベンチマークしてみる必要を感じます。 ■他社と異なり、生産を維持したダイキン 7月末時点で8月までの半導体は確保できているがその先は未確定、「現在は生産ができない状態ではない」が「潤沢という状況からはほど遠い」と、7月30日の日本経済新聞で報道されていたダイキン工業ですが、9月8日には家庭用エアコンの半導体は2021年度分(2022年3月まで)は確保との報道があり、10月30日には4期ぶりの最高益見通しの発表がありました。 この要因には、「供給サイドのところで弾切れを起こすことなく、最終製品を作って、それをお客様にお届け(第1四半期決算説明会)」できたことがあったとされています(他社では半導体不足などで業績見通しを下方修正したところもあり)。さらに第1四半期決算説明会では「御社の部品調達がスムーズにいっている理由というのは、何かシークレットがあるか教えてもらえませんでしょうか。 新聞記事を拝見させてもらいまして、代替品を探しているというのは読ませていただいたのですが、多分それはポーションとしては小さいかなと思うので、何かダイキンがいち早く動けている理由があれば、教えていただければと思います。」というアナリストの質問へのダイキン側からの説明応答があるなど、いくつかの示唆があるように思えます。 このような成功はなぜ起きたのか? その要因を探ってみることは、他社でも有効な参考事例になるのではと思われます。 ■突発事態には代替サプライヤー探索は困難 7月30日の報道記事には「新たな調達先を探して専用品を生産してもらうには通常1年半かかる」との記述もあります。ではダイキンはどうしたのか。以下の3つがあるように思えます。 #1: 不足部品(半導体)に対する代替品採用 #2: 危機発生時のグローバル一元コントロール #3: サプライヤー(供給)基盤の先行的確保 ■不足部品(半導体)に対する代替品採用 代替品の採用は、9月8日の記事にも「調達部門と設計部門が連携して、互換性のありそうな既存品から探す」などが出てきます。調達と設計の部門間の壁などから連携がうまくない企業も多くある中、これだけでもベンチマークの価値があると思います。 しかしそれに加えて、ダイキン工業はモジュール設計方式による部品共通化に熱心な企業とされています。機種ごとに多種多様な部材を使っているのでは代替品探索も簡単ではありません。それに対して、現在でもモジュール方式は3割に適用、さらに2021年には4~5割、2023年には全機種に適用と報じられています(2021年1月13日、日本経済新聞)。共通化は、部品調達量の増加によるコストダウン効果に加えて、代替品検討にも有用と想像されます。 加えて将来を見据えて、銅やレアアースの使用量削減を進める旨の報道も見られます。 ■危機発生時のグローバル一元コントロール しかし前述の決算発表会でのアナリストの質問にも「代替品はポーションが低いのでは」とありました。それに対してダイキンは「昨年のコロナが始まったときから、緊急プロジェクトで、部材・部品の手当を前倒しでやってきたので、ある程度は在庫が積み上がっていた...(中略)...それを継続してやってきた」と回答しました。 その様子が垣間見れるのが、2020年7月~8月の日経ビジネスの記事になります。記事では「「日本の在庫はあと2週間分しかない。このままだと底を突く。欧州に送る予定の部品を急きょ、日本に送ってほしい」新型コロナの感染拡大で世界のサプライチェーンが停滞した2月。グローバル調達を担う竹内牧男執行役員は担当者に指示した。」との記載があります。ここから2点が推測できます。 1点目は、欧州の部品を日本に転用できる部品共通化の状況。特に2021年10月28日の記事では、部品共通化の困難さを克服し、「世界約50カ所の工場で、空調の部品と生産ラインを共通化する」旨が報じられています。 加えて2点目は、竹内グローバル調達担当執行役員が、部品配分を一元コントロールする司令塔として機能している状況。緊急プロジェクトで各拠点に円滑に前倒し手配指示が出されている様子が伺えます。 ■サプライヤー(供給)基盤の先行的確保 加えて、2020年8月14日の日経ビジネスで報じられた地産地消化。輸送を伴わずに生産地で部品を確保するとともに、前述の部品共通化と合わせて、供給基盤の強化(緊急時の転送余地拡大)にもつながると思われます。 そしてその秘訣として「ダイキンが目を付けた企業には、集中購買先のサプライヤーの最安値をベンチマークに、生産性の改善の方法を伝えていく。集中購買先のサプライヤーとの競争を促し、コストを下げる」のように、最安値をベンチマークに生産性の改善の方法を伝えていける情報蓄積・共有が、そこにはあるような気がします。 コロナ後の世界を見据えねばならないタイミングに来ていますが、このような成功事例を検討しておくことは重要ではないかと思います。 参考) 暑さ本番、エアコンに供給懸念 半導体不足で減産も-日本経済新聞(2021年7月30日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF16EM00W1A710C2000000/ ダイキン「21年度分は確保」 家庭用エアコン部品調達(2021年9月8日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0815T0Y1A900C2000000/ ダイキン4期ぶり最高益 22年3月期、原料高をはね返す-日本経済新聞(2021年10月30日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF268VL0W1A021C2000000/ 世界的やりくりでギリギリしのぐダイキン 半導体不足への対策‐日経クロステック(2021年7月9日) https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05817/?n_cid=nbpds_reco ダイキンが銅使用量を半減 脱炭素で高騰、アルミで代替-日本経済新聞(2021年8月24日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF278HB027072021000000/ ダイキン、全空調機器で脱レアアース 調達リスク回避-日本経済新聞(2021年10月9日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF169080W1A910C2000000/ ダイキン、エアコン部品を世界共通に 開発期間を半減-日本経済新聞(2021年1月13日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOHD24C8A0U0A221C2000000/ ダイキン工業は世界約50カ所の工場で、空調の部品と生産ラインを共通化する。目標はコスト7割減。-日本経済新聞(2021年10月28日) https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77047480X21C21A0TB2000/ ダイキンやクボタ、生産・調達を複線化 供給網見直し-日本経済新聞(2021年10月13日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF178WE0X10C21A8000000/ トヨタやダイキン妥協せず リスクの遮断、複線化からネットワーク化へ-日経ビジネス(2021年8月14日) https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00569/ |