Blog"   調達購買関連 最新トピックス
インフレ下、個別値上げ要請の是非判断と社内説明、品目別の対応優先度、さらに将来への備えをどう考えるべきか-Mckinsey (2022-01-19)

モノ不足とインフレへ状況の理解はあるものの、「購入価格上昇の責はやっぱり購買だろ」「単に値上げ追随では、購買の存在意義は」の雰囲気もあり、どう対応すべきかの記事が増えています。その中で、マッキンゼーが論考「現在のインフレ市場で、価格上昇にどう対応するか(How to deal with price increases in this inflationary market)」を1月13日に発表しました。広範でかなり濃い内容ですが、包括的でおススメです。

論考は、以下の3部分より構成されています。
1.個々のサプライヤー値上げ要請をどう分析し、是非判断を行うべきか
2.品目特性をマトリックスで分類し、最良な対応策をどう見つけ出すか(クラルジックマトリックスもどき)
3.次のインフレの備えとして何を行っておけばよいか


【#1 個々のサプライヤー値上げ要請をどう分析し、是非判断を行うべきか】

サプライヤーの値上げ要請を全体一括で是非判断するのではなく、構成要素費目に分解し、個別費目の価格変動状況に応じた「あるべき価格(Should-cost)」算定に基づいた値上げ要請の是非を判断できるようになっていないいけない。そうでないとサプライヤーとまともな交渉もできないし、購入価格アップの社内説明責任も果たせないことが指摘されています。

例えば、コットンTシャツの総コストのうち、綿生地コストは50%。綿生地コストのうち原料の綿花コストはその3分の1。ゆえに、綿花コストが6%アップすれば、総コストは1%アップとのファクトベースの話がサプライヤー交渉の席でもでき、かつ社内説明でももできないと、購買部門としてはダメなのではとの話が、具体対応実施手順を含めて展開されています。

【#2 品目の特性をマトリックス分類し、特性に最良な対応策をどう見つけ出すか】

とはいえ、ここまでは個々の値上げ要請対応の話です。それでは全体観点では十分ではありません。ゆえに次に展開されるのは購買部門全体視点(購買司令塔視点)で、品目特性分類を行い、特性に応じた対応優先順位付けと対応策をどうしたらよいかです。

それにはクラルジックマトリックスに似た2軸マトリックスが提案されます。ただし軸が異なります。市場状況(インフレかデフレか)と契約取引条件(価格変動影響を受けるか受けないか)の2軸マトリックスです。そして象限ごとに優先度と推奨対応策が示されています。

例えば、インフレ状況で価格変動影響を受ける取引条件の品目は、対応優先度が高い「防御(Defence)」象限に位置付けられます。採るべき対応策としては「長期購入予定数量と価格明細を用いた交渉」「数量集約で魅力度を増して、新規サプライヤーの開拓につなげる」「非価格条件の活用」が示されます。

さらにマトリックスの下には、「変動緩和のための商取引(コマーシャル)面での即効策」「防御的、技法的(テクニカル)なインフレ対応策」「既存パートナーシップ(運命共同体)関係の活用」「確固たる事実に基づいた値上げ要請是非判断」「Win-Winの交渉を模索」「新規サプライヤー開拓」の視点を変えた対応策が説明されます。

【#3 次のインフレ局面への備えとして何を行っておけばよいか】

そして将来への備えとして「リスクの上流(サプライヤー)に転嫁」「リスクの下流(顧客)に転嫁する」「社外サードパーティへのリスクヘッジ」「自社内変更でのリスクの緩和」の4つが概説されています。

6ページにこれだけの内容を詰め込んだ論考のため読むにハードなところもありますが、内容は時機に合致し、おススメと思います。