Blog"   調達購買関連 最新トピックス
非サプライヤーでもイノベーションエンジンに: 類を見ないプラットフォームをハイアールが構築-Harvard Business Review (2022-11-03)

ハーバード・ビジネス・レビュー誌(英語版)2022年7-8月号に、論考「サプライチェーンプラットフォームをイノベーションエンジンにする方法(How to Turn a Supply Chain Platform into an Innovation Engine)」が掲載されました。現在、Covidのパンデミックとそれに続く混乱を経て、Covid後に向けた論考が多く出ていますが、その1つでもあります。

この論考では、中国の家電メーカーのハイアールのCOSMOPlat(Cloud of Smart Manufacturing Operation Platform)を「従来のデジタルサプライチェーンプラットフォームや他のデジタルプラットフォームとは根本的に異なるもの」として紹介されます。

ではどこが異なるのか。
ハイアールとその認定サプライヤーとの間で、設計情報、技術情報、生産状況などの情報連携を行う機能は、他社も備えていると思います。ただしCOSMOPlatは「バリューチェーンの上下にある複数の企業が連携するための統合機能が格段に充実している」と論考の筆者は評価しています。

それ以上に顕著な特徴を論考は次のように説明します。

「ハイアールのプラットフォームが他社と異なるもう一つの点は、サプライヤーのネットワークをどこまでコントロールするかにある。多くの企業は、自社のプラットフォームに参加できるサプライヤーを決め、そのサプライヤーが携わる業務を指定している。しかし、ハイアールは、自社のサプライヤーに限定しておらず、また、誰がどのような作業を行うかを指定していない。ハイアールでは、自社の課題をCOSMOPlatに掲載し、異業種のサプライヤーであっても、現在あるいは将来のサプライヤーであっても、解決策を提示したり、解決策を共同で探したりすることができる。また、多くの大企業では、この共同作業のプロセスを厳しく管理しているが、ハイアールではそのようなことはしない。ハイアールが関与しなくても、関係者が一緒になって解決策を考える。このように、他の組織の能力を活用し、必要なリソースを集める有機的なアプローチは、新製品やサービスを提供する機会が短期間で、必要な設計能力やサプライヤーが既にない場合や、大規模または突然の混乱に直面した場合に、特に有効です。」

同様な事例は、やや買い手企業主導の色合いが強いものの、シーメンスの「サプライヤー・イノベーション・エコシステム」プラットフォームにも見られます。その説明は、次のようになっています。

「Siemens Innovation Ecosystemは、シーメンスAGとサプライヤーとのコラボレーションを強化し、最適化するための新たな可能性を切り開きます。サプライヤー・イノベーションは、パートナーシップと目と目のレベルで取り組むことが重要です。私たちは共に、革新的な能力を体系的に活用し、対話、議論、共同創造を通じて新しいアイデアに生命を吹き込みます。私たちは共同で革新的なソリューションとトレンドを特定し、日常を一変させる技術を創造します。」

別の論考で取り上げたように、現在「サプライヤー・エコシステム」の論議が多く出てきており、HBR英語版本誌の記事で取り上げられたことも、この文脈で読まないと誤ると思われます。

一方で翻って、いまだに品質改善提案を年間10件提出したから、サプライヤー評価点を10点満点にしてやろうとかやっている数多くの日本企業はいったいどうしたものだろうかと、本気に思ってしまいます。

参考)
Haier COSMOPlat
https://www.haier.com/global/haier_cosmoplat/

Siemens Innovation Ecosystem (説明ビデオなどもあり)
https://ecosystem.siemens.com/general/suppliers/overview