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サプライヤーとの相互相性&信頼度指数を作ってみた~やや学術的だけど留意すべき内容-Harvard Business Review (2022-11-15)

7つの形態のソーシング形態(ビジネスモデル)論を提唱していたテネシー大学のKate Vitasek教授らが、129件のアセスメント実証を行って、買い手企業とサプライヤーの相性と信頼を指数化したとの論文が、11月4日にハーバード・ビジネス・レビューで発表されました。

■7形態のソーシング(ビジネス)モデル論
Kate Vitasek教授は、Vastedなどの7形態のソーシングビジネスモデル(以下に羅列:モノよりもサービス業務契約にフォーカスと思える)を定義し、その中から最適なモデルを選択することを、10年近く前から提唱していました。

〇単純取引(Transactional/Market)
・基本プロバイダーモデル (Basic Provider Model)
 多数の供給者がいる業界で、単純に商取引を行う
・認定プロバイダーモデル(Approved Provider Model)
 認定済供給者のみと、単純に商取引を行う
〇協働での付加価値(Relational/Hybrid)
・推奨プロバイダーモデル(Preffered Provider Model)
 単なる認定を越えて、買い手の協力で供給者が付加価値をもたらす関係性を前提とする契約
・パフォーマンスベース/マネージドサービスモデル (Performance-Based/Managed Services Model)
 SLAなどで付加価値を事前定義した、達成すべき成果基準を事前定義した契約
・ベステッド(Win-Win)ビジネスモデル(Vested Business Model)
 双方の利益目標を達成(Win-Win)に協働する契約
〇支配/上下関係がある(Investment/Hierarchy)
・シェアードサービスモデル(Shared Services Model)
 自社内組織による一元的なサービス提供
・出資パートナーシップ(Equity Partnerships)
 出資先関係のある企業を使ったサービス提供

そして、主に業界の状況などを見て最適モデルを選択すべきとされていたのです。

■サプライヤーとの相性と信頼度(C&T: Compatibility and Trust)測定ツール
でもソーシングモデル選択はそれだけで決まるのでしょうか?
例えば、サプライヤーにとって「うざい、めんどい(pain in the ass)」取引モデルを押し付けたら、面倒手間賃で1.5割増しの料金設定がされたりしかねません。ということは、サプライヤーとの相性や信頼度もソーシングモデル選定の重要な決め手ではと考案したようです。

指標化の試みは、20以上の業界の98社で129アセスメントを通じて行われ、その結果、以下の5つの項目が、相性と信頼度に大きく関わっているされました。
・共通の目的と方向性にフォーカス(Focus)できているか
・オープンでタイムリーなコミュニケーション(Communication)がとれているか
・取引先を含め、いかにチームになっているかのチーム志向(Team Orientation)
・新しいアイデアや解決策を試行錯誤してイノベーション(Innovation)を目指す協力関係
・目標とするパフォーマンスへのコミットと達成への信頼(Performance trust)

論考は、ここまでの中間報告の様子です(その後、信頼を得る3つの方法- 信頼は企業文化の適合から始まる、ビジネスモデルの選択は重要、信頼を高めることは戦略的な選択- がやや取ってつけたように出てくきます(但し、一読の価値はあると思えます)。もしかしたら、詳細は書籍化され、その後により具体的/実務的なものへと展開されるのかもしれません。

しかしサプライヤーとの相性や信頼強度の測定は、これまではかなり主観的/恣意的な決め打ちをしてきました。客観性は疑わしい状況でした。しかしこのような客観的な指標化の動向がでてきたことは留意しておくべきかと思います。

なお余談ですが、サプライヤー関係のクローズアップが進む現状において、過去に決着済の概念が持ち出される事態もあるようです。例えば、「サプライヤーに選ばれる顧客(Custemer of Choice)」は15年近く前にキャッチーに流行った概念ですが、じゃあ具体的にどうするのとなると、媚びるか、恩を売ってやる(上から目線)になりかねないよねで、終息に向かいました(前述の7形態などで、より検討を深めることも考えられますが...でも主観性・恣意性は残る)。ところが、昨今これを持ち出して「こんな素敵な概念があるんです。じゃあ具体的施策を皆で出してみましょう」と有料の情報収集を仕掛ける向きもあるとのこと。見極め力も試されることになっているようです。

参考)
How to avoid a 'pain in the ass' charge from suppliers-Supply Management (2022年11月9日)
https://www.cips.org/supply-management/news/2022/november/how-to-avoid-a-pain-in-the-ass-charge-from-suppliers/

7つの形態のソーシングビジネスモデルについては、以下を参照:
Unpacking Sourcing Business Models: 21st Century Solutions for Sourcing Services-Vested Outsourcing (2015年12月11日)
(下記リンクのライブラリから選択)
https://www.vestedway.com/thank-you-for-registering-for-your-vested-outsourcing-white-paper-or-case-study/

Harnessing The Power of Ssourcing Business Model - Future of Sourcing (2022年5月18日)
https://futureofsourcing.com/harnessing-the-power-of-sourcing-business-models

The ‘Vested’ Approach: A Better Way to Outsource-Supply Chain Brain (2022年3月12日)
https://www.supplychainbrain.com/blogs/1-think-tank/post/34873-the-vested-approach-a-better-way-to-outsource