優れたサプライ戦略を立案する
供給の脆弱さを最小化し、発揮しうるバイイングパワーを最大活用するために、いくつかの欧州企業では戦略策定の4段階アプローチをうまく活用している。このアプローチは単純だが効果的なフレームワークであり、市場および自社データを収集し、将来の供給シナリオを予測し、利用可能な購買オプションを識別するとともに、個々の重要部材のサプライ戦略を立案する。
このアプローチでは、まず対象企業の購入品の全てを利益への影響度と供給リスクの観点から分類する。次にこれらの購入品の供給市場を分析する。そして全般的な戦略的供給ポジションを決定した後、最終的には品目ごとの戦略とアクションプランを立案する。
第1フェーズ:分類
所定の購入品目の利益への影響度は、購入量、全ての購入コストに対する比率、もしくは製品品質や事業の成長への影響から定義する。供給リスクは、購入の容易さ、サプライヤー数、競争相手の需要、内外製機会、在庫リスク、代替品の可能性により測定する。これらの基準を使って、企業は図2に提示した区分に全品目を分類する。すなわち、ストラテジック(利益への影響度が高く、供給リスクも高い)、ボトルネック(利益への影響度は低いが、供給リスクは高い)、レバレッジ(利益への影響度が高く、供給リスクは低い)、非クリティカル(利益への影響度が低く、供給リスクも低い)の4つの分類である。
これらの4つの分類ごとに、特有の購買アプローチが必要になり、そこでの複雑性が戦略的対応策を決定する。ストラテジック品目の購入判断を下すためには、市場分析、リスク分析、コンピューターを使ったシミュレーションや最適化モデル、価格予測、その他様々なミクロ経済的分析といった分析テクニックを駆使する必要がある。ボトルネック品目の判断には特定市場の分析や解決策の意思決定モデルが必要になる一方、レバレッジ品目ではベンダーおよび価値分析、価格予測モデル、意思決定モデルなどが有効である。非クリティカル品目では、簡単な市場分析、意思決定ポリシー、在庫最適化モデルがあれば事足りるのが通常である。オランダの巨大化学メーカーのアクゾノベールのような企業では、この分類をさらに細分化して、供給市場データ分析についてより良く焦点を絞ったアプローチを実践している。
第2フェーズ:市場分析 次のステップとして、顧客としての自身の強みとサプライヤーのバーゲニングパワーとの比較評価を行う(図3参照)。
品質および数量の両面から戦略的に重要な購入品の購入可能性を評価しつつ、体系的に供給市場をチェックし、既存ベンダーに対する相対的な強みを確認していく。次に自社のニーズと欲しいものを確保するための自社の供給経路を分析する。
サプライヤーの強みと購入企業の強みで対峙する関係にある基準といっても、(図3の)いくつかはすでに判りきったものである。しかし、6つについては以降でコメントを付すこととする。