Purchasing Must become supply Management
Peter Kraljic (Harvard Business Review 1983年9-10月号)
翻訳:寺島 哲史 (第30回購買ネットワーク会を記念して)
多くの企業の購買部門が享受してきた安定した業務のやり方がどんどんと困難になっている。資源の枯渇や原材料の希少化、供給市場での政治的混乱や政府介入、競争の激化、技術変化の加速が、何の驚きも無かった時期を終わらせようとしている。
災害による供給途絶の対策を図り、変化する経済や新技術がもたらす新たな機会に対応するために、企業はどうすればよいのだろうか。強い抵抗勢力の圧迫に直面しつつも、収益性のある国際ビジネスで自身を維持していくに必要な能力は何なのであろうか。ほとんどの業種の製造業者はこの問いに答えなければならなくなっている。反面、いくつかの企業では、増加しつつある圧力への対応を既に実施している。例えば
□購買支出が1年以内に売上高の40%から70%に増加したことに気づいたある欧州事務機器メーカーは、米国および日本のサプライヤーからの購入を増加し、仕掛品在庫削減のために購入計画システムを改訂するとともに、電子機器と外国語スキルを持った購買スタッフの増員を所属事業部門に要請した。
□ブラジルのような遠隔地サプライヤーと1988年までの長期契約を締結することによって、日本の鉄鋼メーカーは主要な欧米競合相手に対して、18%のコスト優位性を獲得している。
□ヘキスト(ドイツの巨大製薬企業)はクウェートとの関係を強化し、デュポンは最近コノコを新買収戦略の一環として買収した。これらは、米国のダウ・ケミカルや欧州のBASFのような他の化学企業が優位性を得るために実施した供給確保の長期的アプローチに対応するものである。
□キャボットは、事業に必須なクロム、バナジウム、ニオブ、チタン他の金属の希少化に直面すると鉱物材料部門を設置し、企業としての購買戦略を策定し、未採掘鉱石権益の購入から、金属精錬のジョイントベンチャー設立までの新たな機会探索を行っている。キャボットは、品目特有の専門取引に関する既存スキルを補完し、ロンドン市場に接近するために、ロンドンに基盤とする商社も買収した。
□米国の自動車メーカーは、慣習的に国内での部材調達に依存してきたが、購入スキームを再評価して、潜在的サプライヤーまで視野の拡大を進めている。フォードは「ワールドカー」である「エリカ(Erika)」の部品を複数の海外子会社で生産するだけでなく、トランスアクセルを日本子会社の東洋工業から購入している。クライスラーは1.7リットルのオムニ・エンジンをフォルクスワーゲンから1987年から購入していたが、2.6リットルエンジンは三菱から購入している。15年前は5%しかなかったが、米国自動車産業は1990年までに35%から40%の部品やコンポーネントを海外から購入するようになるだろうと言われている。
重要部材やコンポーネントの長期供給確保のために、製造業者はグローバル・ソーシングのリスクと複雑性に対応せざるを得なくなっている。一方で既にグローバル基盤から購入している企業でも、前例のない規模の不確実性、安定供給や価格安定性の途絶への対応を学ぶ必要が生じている。マネジメントは、事業の進捗状況を単純に管理するのではなく、いかに事象を優位性に結び付けるかを学ばねばならない。そして、パーチェシング(業務部門)からサプライマネジメント(戦略部門)へと、考え方の根本的な転換が、このような状況の発生に起因して必要となってきているのである。
複雑な条件の下で、競争力を確保しつつ、然るべき量の重要品目を購入しなければならない製造業にとって、サプライマネジメントは重大事である。そしてサプライヤーとの関係、技術開発、そして/もしくは、それらの品目の確保に関する不確実が増大していけば、サプライマネジメントはさらに重要になっていく。