Book Club"   読書会(Book Club):レッドシート交渉方法論

かねてよりお話していた書籍「購買担当者のための交渉論(Negotiation for Purchasing Proffesionals)」の読書会の準備ができました。 購買業務で常に課題に上がる購買交渉をテーマにした、海外のベストセラーの日本語訳を毎月定期配布して、参加者の皆様でワイワイガヤガヤと楽しもうという企画です。

この本を読むことにより、購買購買交渉を体系的な手続きとして把握することができ、BATNAやZoPAといった基本概念の使い方も実例に即して理解することができるようになります。 これまでは気が重く感じていた購買交渉が、気軽に、ある意味楽しめるものに変わる手法ではないかと感じています。これまで日本で語られていなかった概念も数多く登場してきます。

以降にご案内を記述いたしましたので、bookclub@itscobuy.com(@は半角に修正)まで、翻訳テキスト発送先メールアドレスと購入証明書を添えて、お申し込みをいただけますでしょうか。 第1回の翻訳発送は2016年8月20日を予定しています。

1.読書会をやりませんか? - 実施の背景と趣旨
購買ネットワーク会メンバーを始めとした、意欲が高い日本の購買関係者の皆様は、海外のいかなる国にも劣るものではないと思います。 ところが流通している購買業務関連情報はというと、海外の方が遥かに多く、日本語ではありませんので、日本人が気軽にアクセスできない状況でした。これは残念なことと思います。

ところで、購買ネットワーク会発足からの10年来、継続的に取り上げて欲しいテーマとして上がり続けてきたのが「購買交渉」でした。 購買交渉に関しては、海外では「購買担当者のための交渉論(Negotiation for Purchasing Proffesionals)」という評判が高い書籍(第2章以降をご覧ください)が出ていました。しかし日本語訳がありませんでした。

それならば、日本語訳が作れれば、みんなで楽しめるだろうのことで、空き時間を使いながら翻訳してみたのです。 現在翻訳作業もほぼ終わりました。そこで、ご参加者に定期的に翻訳版をお送りし、ワイワイガヤガヤと楽しめる「読書会(Book Club)」を行えればと考え、ご案内をする次第です。

なお、「読書会(Book Club)」という企画は、マーク・ザッカーバーグ氏が2015年に行った"読書会"から着想を得ました。 また、MOOCのような無料大規模公開オンライン講座の時流の流れの影響も受けています。

2.書籍「購買担当者のための交渉(Negotiation for Purchasing Proffesional)」の概要
書籍構成
読書会の対象書籍「購買担当者のための交渉論(Negotiation for Purchasing Proffesionals)」は、英国のコンサルティング会社"Positive Purchasing"社のCEO、Jonathan O'Brien氏の著作で、1993年8月に出版された14章からなる書籍です。

交渉に関する書籍はハーバード流交渉術を始めとした一般論、あるいは法律家や営業の側からの交渉術に関するものは、数多く出版されていました。 しかし、購買業務従事者向けの書籍はないというのが、著者O'Brien氏の問題意識であり、この本が書かれた契機ともなっています。

それとともに、営業側がどういう教育を受け、どういう作戦で来ているのかも、著者は第2章で明らかにしてくれています。
また、ZoMA(≒ZoPA)などの購買交渉の基礎概念は、第1章で説明されたうえ、以降の手順説明で繰返し出てきますので、BATNA、ZoMAといった交渉に基本概念は否応なく身につく仕組みとなっています。それ故、これまで基礎概念の理解が進まなかった方々にもお薦めの書籍となります。

この本の特色を、著者自身が以下のように説明しています(「はじめに(Introduction)」から)。

●この本は、何かを買っている人のための実用書です。
●原子力潜水艦購入のような大規模高額交渉から子供のおねだり対応まで、様々な交渉でも役立つアプローチです。
●レッドシート方法論という実績がある方法論(第3章を参照)をベースにしています。
●交渉の開始から終結までの全体をカバーするアプローチですが、交渉の規模に応じて実施個所を取捨選択できます。
●一律お仕着せではありません。実施者の性格(交渉特性)も考慮し、各自のやり方や交渉戦術(レパートリー)を尊重します。
●「交渉能力は生まれつきではなく、後天的に習得するものだ」という考えで、勝てる交渉用の方法論を提示します。

この本は、出版と同時に大きな反響を呼びました。現在は、米国および英国の購買担当者の間でも「あの本...」といった表現で話が通じるような状況です(この本で展開されている技法類は、一般常識として業務に適用されています)。 英国の購買団体であるCIPS(Chartered Institute of Purchasing and Supply)の書評は、残念ながら有料会員しか見ることができなくなってしまいましたが、Spend Mattersの3部作の書評( #1, #2, #3)では、「第12章ボディランゲージ」を除いて、絶賛されています。

しかし、日本では話題にもあがらないままで過ぎてきました。
3.Red Sheet方法論とは
では、この本が基いている「レッドシート方法論」とはどのようなものでしょうか。

レッドシート概要

上図のようなシートを埋めていくことにより、十分な検討を経た漏れのない計画立案を実施し、かつ交渉結果もきちんとまとめてしまう、一定の手順(プロセス)形式でやることをまとめたものです。 (筆者によるレッドシート方法論の概要説明は、翻訳サンプルとして提供されている「第3章」にまとめられていますので、そちらもご参照ください。)

もう少し手順をフレークダウンしていってみましょう。

=交渉基本方針の立案=

レッドシート手順(前半)

交渉を行う際に、まず把握して、対応策を考えておかねばならないのは、どのようなことでしょうか。
レッドシーと方法論では、「1.背景」、「2.関係者」を押さえた上で、「3.交渉しあう組織の文化」、「4.交渉メンバーの性格」、「6.力関係」といった前提条件を確認し、その対応策を考えます。

交渉しあう組織の文化
組織文化

自社および相手の企業文化が違う場合には、その差異の埋め合わせ方を考えておかねばならない、その対応策を考えておこうというのが、最初の前提条件です。
日本でも新興企業と歴史がある企業の間では、企業文化が異なることがあります。歴史があり、合議制の集団文化の企業を急かしても、うまくまとまらないかもしれないといったことが懸念されています。 ちなみに、この本でよく引き合いに出てくる「トヨタ社」という日本企業は、集団指向、長期、権威主義の典型事例にされているのには、苦笑せざるを得ません。

交渉メンバーの性格
パーソナリティ

次に検討するのは、自社および相手の交渉メンバーの性格です。やたら短気で気が強い人を交渉リーダーにしてもうまくいくのか、おとなしいが律儀な性格の人は「データマン」役にしようといった役割まで考えていきます。

力関係
力関係

最後に、「依存関係(売上の何%依存など)」、「市場の需給」、「立場の強さの関係」、「交渉終結までの猶予時間」、「今後の取引の機会」の観点を分析します。

ゲーム(基本対応方針)の定義
ここまできたら、どういうゲームを行うかが明確になってきます。一回だけの取引であれば、「チキンレース(どちらかが屈服するまで戦う)」を選んでもいいでしょう。 「ただし決裂した場合を考えてBATNAは確保されていること!」といった具合に、BATNAの具体的な場面での使い方もじっくりと語られます。 しかし両者が利益を得ることが望ましい場合には、「鹿狩り」が必要といった具合に、基本的な対応方針が設定されます。

レパートリー
さらに交渉の各局面でとるべき戦術がレパートリーとして紹介されますが、具体例は次の「交渉イベント計画」で見てみましょう。

=交渉イベント計画=
レッドシート手順(後半)

次は、交渉イベントの計画を立案です。役割に応じた席次まで定めた上で、時間割(タイムライン)まで定義して、時間切れを起こしたりしないように留意しています。
ここで「使用戦術」欄に記入されているのが、前述のレパートリーです。サプライヤーを出迎えた時の「サンタクロース」は「なにかプレゼントがありそうな気前良い態度をみせて、相手の気持ちをほぐす」戦術です。強面に出迎えて、余計な緊張関係を作らないようにするには、こう定めて、メンバー全員で共通認識しておけば、間違いは生じにくくなります。
一方で、次の「裂け目を探す」とは相手の弱みを探ること、「砂の上に線を引く」とはこれ以上は譲歩できない境界を提示して地歩を固める戦術です。

皆さんは、交渉の手順をこのように体系的に考えていらっしゃいますか? 米英でもこのような購買交渉は行われていなかったので、この本が2013年に刊行されると、レッドシート方法論は大きな反響を呼びました。

この方法論の手順全てをいつも適用するには重すぎますが、このような考え方を頭の片隅にでも入れておくことは、皆さんの購買交渉をレベルアップすることにつながる...というより、交渉が気軽に、ある意味楽しくなりました、私の場合。だから皆さんともこのやり方を共有できればと思ったのです。
4.日本語訳のサンプル
とは言っても、翻訳の品質が悪ければ、読書会は台無しになってしまいます。そこで「第3章: Red Sheet–交渉に勝利するプロセス」の日本語訳をサンプルとして添付しました。画像をクリックすると、pdfファイルが開きます。

翻訳サンプル

第3章の原文の一部は、アマゾン・ジャパンのなか見!検索(アマゾンへのリンク)でご覧いただけます。どうか、翻訳の質のご確認をいただけますでしょうか。

なお、素人の翻訳ですので、各章のサマリー解説を同時にお送りし不足を補うようにいたします(「5.お申し込みおよび実施手順」をご参照ください)。
5.お申し込みおよび実施手順
下図の手順で進めてまいります。
実施手順

=お申し込み手順=
ご参加いただける方は、以下の要領で bookclub@itscobuy.com(@は半角に修正) 宛にメールをお送りください。

●メール題名は、「読書会申し込み(○○○○)」としてください [○○○○には、お申込者のお名前を入れてください]。
●メール本文には、翻訳テキスト発送先メールアドレスを記入してください。
●添付ファイルとして、書籍購入が証明できるもの(アマゾンの注文履歴の画面コピー画像など)添付してください。


###書籍購入が証明できるものの例(アマゾンの注文履歴の画面コピー画像など)###購入証明書"
(注)証明書類/データは、購入者のお名前がわかるものをお願い致します。

お申し込みに対しては、受付確認メールを受信後1週間以内にお送りいたします。もし、1週間を過ぎても受付確認メールが届かない場合は、どうかご連絡をいただけますでしょうか。

=毎月の発送手順=
ご参加いただいた皆様には、以下のスケジュールで翻訳テキストとサマリー解説をpdfファイルでお送りいたします。
発送スケジュール

※以降に、英語版の「お申し込みおよび実施手順(上記の英訳)」をこれから作成し、英国の出版社と作者にも実施手順がわかるようにします。
6.留意事項#1-Amazonでの書籍購入について(Kindle版の購入など)
=AmazonでのKindle版の購入方法=
現在、最も安価に原書を入手できるのは、アマゾンのKindle版の購入です。2016年7月25日現在で 3,893円と4,000円を割る価格で入手できます。
Kindle版は、アマゾンのKindleタブレットを購入しなくても、Kindle閲覧用のスマートフォンアプリやPCソフトがアマゾンから提供されています。それを使って閲覧することができます(以下は、PC版Kindleの画面です)。
PCでのKindle閲覧

ただし、日本以外のアマゾン(www.amazon.comなど)から購入したKindle版は、海外のアマゾン担当者と英語チャットで連絡して、読めるようにしてもらう必要があります。また、このやり取りが1回では済まないことも多々あります。
従って、Kindle版を購入する場合は、必ずアマゾン・ジャパン(www.amazon.co.jp)より購入いただくことをお薦めします。

=第2版への対応について=
最近、「購買担当者のための交渉論(Negotiation for Purchasing Proffesional)」の第2版が10月28日に発売されるとの先行発表がありました。しかし、以下の理由から第1版で読書会をスタートしたく考えています。

1.同一著者の過去の第2版も一部増補に留まり、かつ予定発売日が2ヶ月近く遅延した。
2.第2版は25%価格が高くなる。

"Category Management in Purchasing"で同様の事態が発生し、かつ今回同様に第2版は実質的には値上げとなりました。 従って、第2版発売後に第2版での変更箇所のサマリーを参加者にご提示するようにして、第1版で読書会を進めていく予定です。

8.留意事項#2-参加メンバーの交流機能(Facebookグループ)について
読書会のFacebookグループを開設しました。
翻訳の配布開始前までは公開グループとし、その後は参加メンバーの方に公開先を限定いたします(有料著作物の内容が開示されてしまうため)。また、非公開にする前に、参加メンバーの皆様をご登録するように致します。
Facebookグループ

この場所を使って、参加メンバーの皆様とのQ&A、議論、交流が図れればと考えております。経緯が残る深い議論を行い、新しい考え方を参加者の皆様と楽しんでいければと考えています。 既存のFacebook IDをお持ちになっていない方も、読書会用にIDを作成いただき、ご参加いただければ幸いです。

なお、動画によるプレゼン/ナレーションのご提供などは、開始後に皆様のご要望/状況を見ながら検討をしてみたく考えております。

9.その他のご連絡、お問い合わせ先
ご連絡、お問い合わせがある方は、bookclub@itscobuy.com もしくは captain.pirates@gmail.com (@は半角に修正) 宛にご連絡ください。

10.個人情報ほか、お預かりした情報の取扱い
●市販本の日本語翻訳の配布になりますので、原著の購入の証憑の添付をお願いしています。出版社や作者から照会があった場合の対応のためにのみ用います。
●皆様からご提供された情報(含:原著の購入の証憑)は、「購買専門家の交渉論(Negotiation for Purchasing Professionals)」読書会以外の目的には使用しません。それ以外の商業目的などに使用されることはありません。
●皆様からご提供された情報(含:原著の購入の証憑)は、法令に基づく場合を除き、個人情報を第三者に提供することはありません。法令に基づく場合であっても、開示要求が有りその対応としてどのように開示するかを皆様にご連絡の上で、開示いたします。
●皆様からご提供された情報(含:原著の購入の証憑)は、読書会終了後の3ヶ月をもって削除し、削除が完了したことを皆様に通知いたします。