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広告宣伝(Advertising)
広告宣伝費の支出状況
広告費総額状況 グラフは「日本の広告費 2014(電通)」データを使って作成しました。 日本国内の広告費支出は、現在6兆円規模となっていますが、その金額は景気動向(GDP)に左右されることが報告されています。 最近は、景気回復に伴って、増加傾向にあります。

広告費売上高比率推移 個々の企業での広告費も売上高に比例して増減する傾向が認められます。 日経広告研究所では、有力企業の広告宣伝費の支出状況を財務データを主体に調査し、概要をWEBで公表しています。 グラフはそのWEBより転載しました。

媒体別広告費推移 広告媒体別では、マス広告4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)が約半分を占めますが、紙媒体の新聞・雑誌を主体に金額が縮小してきています。
一方で、インターネット広告は年々増加の傾向にあります。
なお、広告媒体については、以降の「広告媒体の種類と価格単位」で記述します。 グラフは「日本の広告費 2014(電通)」データを使って作成しました。

広告宣伝のコスト構造
広告宣伝のコスト構造 広告宣伝の購入対象は、企画制作という工数に基づくサービス購買の部分と、媒体枠というモノの購買部分より構成されます。

媒体枠は、媒体社(テレビ局など)からの仕入価格に、広告代理店のマージンが乗った形で広告主に販売されます。
企画制作サービスは、広告企画立案や広告の制作を担う部分です。広告代理店と協力会社で行われた作業に対する費用が、広告主に請求されます。 なお、公正取引委員会から「広告業界の取引実態に関する調査報告書(関連団体&資料を参照)」が出される最初の契機となったのは、広告代理店から協力会社(下請法対象企業)に対して発注書面を交付していないなどの不適切な事態があったためです。 この点については、それ以降も「広告業界における下請適正取引等の推進のためのガイドライン(経済産業省、2007年6月策定、2015年3月改訂)」や「放送コンテンツの製作取引の適正化に関するガイドライン(総務省、2009年7月)」などのガイドラインが出されています。

広告媒体の種類と媒体枠の値決め方式
広告媒体の種類 広告媒体の種類
広告媒体は、「マス媒体」、「インターネット」、「SP媒体」に区分されます。
マス媒体は、マスメディアを使った広告で、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4つの媒体が含まれることから「マス4媒体」と呼ばれることもあります。
SP媒体は、マス媒体以外のセールスプロモーションメディアを使った広告で、交通広告、屋外広告、折込チラシ、DM、イベント・キャンペーンなどが含まれます。
これらに加えて、インターネットが、媒体として急成長してきています。

A.マス媒体
A-1.テレビ
テレビの媒体枠の価格は、GRP(Gross Rating Point:累計視聴率[=リーチ(視聴者数) x フリクエンシー(視聴回数)])に基いて決定されます。CMの形態には、番組提供CM(タイム)とスポットCMがあり、番組提供CMでは、媒体枠の価格(媒体費)に加えて、番組制作費が必要です。
スポットCMの場合は、放送時期や時間帯での放送パターンに応じて、GRP1%当たりの単価(パーコスト)が放送局から提示されます。それとCM本数を掛け合わせたものが媒体枠の料金となります。 基準単価は「放送広告料金表(「価格情報」参照)」で提示されますが、実際には広告の需給状況に応じて変動します。
※参考情報:
「日テレ広告ガイド-テレビCM実践編」を開く

A-2.ラジオ
ラジオの媒体枠価格は、CM1本当たりとして放送局より提示されます。放送時間帯に応じて単価は変動します。
例えば、関東地方のラジオ広告料金の設定は、以下のようになっています。
「関東地方のラジオ局&CM放送ーラジオCM.jp」を開く

A-3.新聞
新聞広告には、「記事下広告(新聞の下部に掲載、全ページ広告も含む)」と「雑報広告(題字下や記事中などの広告)」の2種類があります。
記事下広告は、掲載スペースの大きさ(=段数x幅)で基本料金が決定されます。ただし、一定期間(通常6ヶ月)の期間契約を行う場合は、より割引された契約料金が設定されます。 さらに、色刷・掲載指定(掲載日・掲載面)・両開二連版・変形・エリアごとに内容切替を行う場合は、追加料金が設定されます。
例えば、日本経済新聞社での記事下広告料金の設定は、以下のようになっています。
「日本経済新聞社 広告料金表」を開く

雑報広告は、掲載位置の枠ごとに料金が決定され、前述の色刷りなどの追加要素がある場合は、その分の追加料金が発生します。また、期間契約での割引が行われることもあります。 例えば、日本経済新聞社での雑報広告料金の設定は、以下のようになっています。
「日本経済新聞社 雑報広告ABC」を開く

A-4.雑誌
雑誌広告の料金は、大きさ、位置、カラー(カラー・モノクロ)により決定されます。
特殊な位置(表周り[表紙の周辺]、グラビアページ、見開き)などの場合は追加料金が発生します。また、雑誌編集部と広告主が共同制作するタイアップ広告では、その制作料金も雑誌への支払いに含めなければなりません。 例えば、週刊新潮での広告料金の設定は、以下のようになっています。
「新潮社雑誌広告専用サイト-週刊新潮」を開く

B.インターネット
B-1.インターネット広告の種類
主に、以下のような広告の種類があります。
  • バナー広告:サイト内に飛ばしたい先のサイトリンクを含んだ画像が表示される広告
  • リスティング広告(検索連動型広告):検索エンジンでユーザーが検索したキーワードに連動して表示される広告
  • ディスプレイ広告:表示したサイトの内容に連動して表示される広告
  • ソーシャルメディア広告:ソーシャルメディアのプロファイルや動作(発言・引用内容、フォロー)に連動して表示される広告
  • アフィリエイト広告:アフィリエイトサイト(個人ブログなどの広告協力サイト)に表示される広告
  • ネイティブ広告(記事広告):掲載メディアの記事の一部に溶けこませ、記事と区別することなく広告内容を伝達する広告

  • B-2.インターネット広告の課金方式
    上記の種類に応じて、複数種類の課金方法があります。主な課金方式は、以下のようになります。
  • クリック課金型:1回あたりのクリック単価xクリック回数で料金が決定される方式です。主にリスティング広告やディスプレイ広告で用いられます。
  • エンゲージメント課金型:1回あたりの動作単価x所定動作回数で料金が決定される方式です。所定動作は、広告上へのオンマウス、ソーシャルメディアでの「いいね」などで事前に定義します。主にディスプレイ広告やソーシャルメディア広告で用いられます。
  • インプレッション課金型:1回あたりの表示単価x表示回数で料金が決定される方式です。主にディスプレイ広告やDSP(ツール配信)広告で用いられます。
  • 成果報酬(成果課金)型:広告主の商品やサービスが実際に成約された場合に料金が発生する方式です。主にアフリエイト広告で用いられます。
  • 配信課金型:配信1回あたりの単価x配信数で料金が決定される方式です。主にメール広告で用いられます。
  • 掲載期間保証型:定められた掲載期間に所定の枠内に広告が継続して表示される方式です。バナー広告で用いられます。
  • インプレッション保証型:掲載期間とともにインプレッション(表示回数)も保証し、表示回数に応じて料金を支払う方式です。バナー広告で用いられます。
  • ページビュー保証型:広告主のWebサイトのPV数を保証し、最低PV数ごとに料金が発生する方式です。主にネイティブ広告(記事広告)で用いられます。
  • 例えば、Yahoo! Japanでの広告料金の設定は、以下のようになっています。
    「Yahoo! Japanプロモーション広告」を開く

    C.SP媒体
    C-1.交通
    交通広告は、「車内広告」と「駅構内広告」に分けられます。
    車内広告は、「ドア横」、「中吊り」、「ステッカー」、「つり革」など掲載位置ごとに単価が決まっていて、掲載期間を定めた期間契約で購入しまます。また、路線によっても単価は変動します。
    駅貼広告は、「駅貼」ポスターが主体です。掲示場所・大きさ・形態により料金が決まっています。また、駅ごとに料金のランクが違います。
    例えば、東急電鉄での広告料金の設定は、以下のようになっています。
    「TOKYU OOH 交通広告」を開く

    C-2.屋外
    屋外広告の媒体枠価格は、掲示場所と大きさにより決定されます。掲示場所の単価は、来場者数に応じて変動します。所定の掲示期間(1週間、1ヶ月など)が定められており、その期間分の契約となります。また、施工費と自治体許可申請手数料が必要になる場合があります。
    ※参考情報:
    屋外広告料金が下落 ネットに需要移り1年で1~2割安(2010年、日経新聞記事[有料会員])


    価格制度(報酬制度)
    価格制度(報酬制度) 価格制度(広告代理店への報酬制度)には、以下の4形態があります(ミックスされた契約になっている場合もあります)。
    グロス: 広告代理店に対して、一括で定めた範囲の広告宣伝を発注する方式です。広告代理店は、広告主の発注金額でやり繰りを行います。
    コミッション: 広告代理店に対して、個々の広告宣伝案件ごとに一括で発注する方式です。広告主は、媒体料金、企画制作料金、広告代理店マージンの内訳は把握しません。
    フィー: 広告代理店が各費用の個別明細を提示し、それに対応した料金を広告主が支払う方式です。
    成功報酬: 広告主と広告代理店が事前に設定した成果目標の達成状況に応じて、広告代理店への支払金額を決定する方式です。

    現在は、グロス取引が5割以上を占めているとの調査結果も出ています(論文「広告取引に関する現状と課題 (小泉秀昭,立命館産業社会論集2007年3月)」。 グロス・コミッション方式の透明性欠如を指摘する声がある一方で、その採用理由として以下のような声もあがっています。

  • 広告量が少なく,コミッション方式以外の報酬制度とした場合の労力と見合わない。
  • 売上げ実績等と連動した広告展開実績が少なく,成果の評価が容易でない。
  • 現状では,競合環境を作り出す方が効率的かつ効果的である。
  • 赤字分を広告会社が自主補填して請求しないため、フィー方式より安く上がる
  • (※広告業界の取引実態に関するフォローアップ調査報告書などより)

    広告宣伝購買の課題
    広告宣伝の購買は、国内外ともに"難しい品目"として認識されています。 特に日本では、媒体社との結び付きの強い有力な広告代理店を中心とする寡占的市場構造が歴史的な経緯も含めて形成され、それが取引慣行の不透明性にもつながっていることが「関連団体・資料」欄の公正取引委員会の資料でも指摘されています。 以下に、2010年のフォローアップ報告書で指摘された、購買観点からみても問題がある主要事項の調査結果です。

    1).広告主(買い手企業)と広告代理店間で取引基本契約が締結されていない
     図表9 基本契約の締結状況の推移(対広告主)

    基本契約締結状況 基本契約をきちんと締結している広告主(買い手企業)は25%にもなりません。


    ※有効回答数: 2005年の調査 43社, 2010年の調査 64社

    2).広告主から広告代理店への受発注が書面で行われていない場合がある
     図表15 個別の広告取引の書面化の状況の推移(広告主との取引)

    書面発注の状況 また、ほとんどの発注を書面で行っている比率も、改善はされていますが60%強となっています。


    ※有効回答数: 2005年の調査 52社, 2010年の調査 96社

    3).一括まとめ発注で購入額の明細検証にいたっていない
     図表24 広告会社に対する報酬についてコミッション方式以外の報酬制度の採用状況

    コミッション方式の状況 さらに、価格制度(報酬制度)も、一式まとめ価格で、明細を把握しないコミッション方式が8割を占めます。
    なお、価格制度(報酬制度)は、次の項で記述します。

    ※有効回答数: 204社

    その他動向
    セントラルメディアバイイング方式
    広告媒体枠の部分は、供給量が限定され、かつ需給に応じて価格も変動する購買対象になります。 それに対して、媒体社の広告媒体枠を大量に販売していることで価格交渉力がある広告代理店に、広告主(買い手企業)の購入量を集中させる「集中購買」策が2000年代後半より多く発生しています。 従来は、広告媒体枠の購入を複数の広告代理店から行っていた場合、それを少数の代理店からの購入に集約する方式です。 この方式を「セントラルメディアバイイング」と呼んでいます。

    関連するブログ記事
    “共創”の調達マネジメントと広告購買のノウハウ : 第52回関東購買ネットワーク会
    放送広告料金表
    日本広告業協会から、年1回8月に放送枠の料金表が発行され、参考にすることができます。 2015年版には「テレビ局127局、ラジオ局101局、BSテレビ17局、CSテレビ68チャンネル分を掲載」と説明されています。
    2015年版のサイトを開く

    新聞広告料金表
    日本広告業協会から、年2回6月と12月に掲載枠の料金表が発行され、参考にすることができます。
    2015年版のサイトを開く

    関連団体
    日本広告業協会(JAAA)
    150社の日本の有力な広告会社をメンバーとする広告会社の業者団体です。広告媒体別料金表の刊行、あるいは広告効果測定の共通指標整備などを行っています。
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    参考資料・サイト
    広告業界の取引実態に関する調査報告書(公正取引委員会, 2005年)
    この資料は、広告宣伝に関する取引の不透明性について現状と問題点を明らかにする目的で、公正取引委員会から発行されたものです。 その記述範囲は、広告業界の構造、市場規模、値決め制度(報酬制度)、取引の流れ、歴史、米国との比較、広告種類別取引慣行(テレビ・新聞・インターネット)と 包括的かつ多岐にわたります。 広告宣伝の購買の基礎知識を得る際に、無料かつ即座に入手できる資料として、まず最初に参照すべき資料と考えられます。
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    広告業界の取引実態に関するフォローアップ調査報告書(公正取引委員会, 2010年)
    2005年の報告書内容からの推移を見る目的で5年後に発行されたフォローアップ報告書になります。 テレビ広告についてフォローアップ結果が記述されるとともに、インターネットのバナー広告の取引の枠組みが詳細に説明されています。
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    日本の広告費(電通)
    日本での広告費支出は、電通より年鑑「日本の広告費」が毎年発表されています。 この資料には、日本での総広告費および媒体別・業種別広告費の推計が記載され、広告宣伝費の支出動向を把握するに有益な資料です。
    2014年版のサイトを開く

    有力企業の広告宣伝費(日経広告研究所)
    日本の上場企業を主体とした約3,000社の広告宣伝費を、決算データ等から集計した年鑑「有力企業の広告宣伝費」が毎年発表されています。 資料本編は有料ですが、WEBサイトに掲載されるサマリーは無料で概要把握に用いることができます。
    2014年度版のサイトを開く

    Advertising Age(Ad Age)(米国)
    かつての雑誌「Advertising Age」がオンライン化され、広告宣伝の情報提供サイトとなっています。 かなりの範囲が無料公開されており、例えば"Prcurement"で検索すると米国での広告宣伝購買のニュースが検索でき、動向把握に役立ちます。
    サイトを開く

    Build It, Buy It Or Both? Rethinking the Sourcing of Advertising Services, Alvin J. Silk and Marta M. Stiglin, Harvard Business Review, 2015
    広告エージェンシー機能の社内部門化が増加している米国で、社内部門化と社外調達を比較して論じたレポートです。 機能やサービスに関する枠組みは、購買観点から考察する際にも活用できます(もっとも内外製観点自体が、購買的なテーマではありますが)。
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    (その他)